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「農」と「食」のフロンティア―中山間地域から元気を学ぶ
 
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「農」と「食」のフロンティア―中山間地域から元気を学ぶ [単行本]

関 満博
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

農山村から始まる自立と産業化の動きを追う
辺境の地の自立と産業化に日本の未来を見る

過疎化に苦しむ辺境の農山村で、今、燎原の火のように自立と産業化への動きが広がっている。
農産物の直売所、加工所、レストラン。そこでは年配の女性たちが、その地に暮らすことの価値を見い出し、輝いている。自立と産業化は高齢化に向かう私たちが挑戦すべき未来ではないか。新たなうねりが今、辺境の地から始まっている

著者からのコメント

日本の「地域産業」をめぐる状況は、この20年ほどの間に劇的に変化している。1990年の頃までの日本の地域産業は、繊維、電機、自動車といった、20世紀後半の日本産業をリードした産業群との関連で議論されることが多かった。地域のモノづくり産業の集積をどのように進めていくのか、ハイテク産業をどのように発展させていくのか、あるいは、周辺の途上国との競合に悩み始めた日用品の地場産業地域、また、重厚長大型の鉄鋼、造船等の企業城下町をどうしていくのかなどが焦点とされていた。
 戦後50年、モノづくり産業、製造業で繁栄した日本は、新たな時代の到来を感じながらも、やはりそれまでの繁栄の基礎であったモノづくり産業、製造業の再編で次の時代を考えようとしてきたのであった。
 だが、1990年代初め以来の20年にも及ぶ試行錯誤にもかかわらず、事態は好ましい方向に進んでいるようにはみえない。世界からは「失われた20年」ともいわれ始めている。終戦のわずか20年後の60年代末に「世界第2位」の経済大国に躍り上がったが、2010年には、およそ40年も続いたその位置を隣国の中国に明け渡すことになった。まさに時代が大きく変わってきたのであろう。むしろ、意外な経済的繁栄を獲得した日本は、現在、20世紀型の発展モデルとは異なった枠組みの中で、新たな「可能性」を模索していかなければならない。
 その場合、私たちの前提は、自然資源に乏しく狭い国土であるにも関わらず経済的に豊かになったこと、そして、その後、1気に成熟し、高齢化、人口減少等に直面しているという点であろう。また、わずか60年ほどの繁栄だが、その発展の激動の中で各所に歪みが生じているという点にも注目しなければならない。

 その場合、元気な高齢者の増加、社会的使命感を抱けなくなった若者の登場、そして、人間関係の希薄化、少子化などは、経済的に発展したはずのこれからの日本を考えていく際の基本的な要素となろう。また、地域の視点からすると、大都市と地方の格差、中山間地域の限界集落の発生、商店街の空洞化、ニュータウンなどの住宅団地の高齢化などが指摘されるであろう。日本は戦後60年の経済発展の1つの帰結として、世界が経験したことのない新たな課題に向かうことを余儀なくされているのである。
 他方、日本が繁栄の時代を通りすぎ、縮小社会に突入しているのとは対照的に、隣国の中国をはじめ東アジアの各国地域は未曽有の発展過程に入っている。少し前まではそれら諸国の低賃金を目指して日本企業の進出が相次いだものだが、21世紀に入ってからは明らかに発展する周辺諸国の市場を目指した進出が目立ち始めている。それは日本企業ばかりでなく、世界の企業の注目するものとなっている。明らかに、東アジアの重心は日本から中国を中心としたものに移りつつある。
 以上のような新たな枠組みの中で、日本の地域産業問題の主要なテーマは、少なくともアジア規模になってきた産業展開の新たな枠組みの中でのあり方に加え、成熟し豊かになったはずの地域を丁寧に見直し、そこに暮らす人びとが「希望」を抱き、輝いていける環境をどのように作り上げていくかというものになっている。

 このようなことを考えながら、2000年の頃から全国の中山間地域を巡り歩いてきた。私自身は70年代の初めの頃から全国の地域産業の「現場」を歩いてきたのだが、それは、2000年の頃まではモノづくり産業、製造業が中心であり、全国の代表的な工業集積地、地場産業地域、企業城下町など都市部に限られていた。時折訪れる農山村地域も、都会からの進出企業への訪問が主たる目的であった。そして、特に90年代末の頃には、いずれの工業集積地域も疲弊していることに胸が痛んだ。モノづくりの「現場」の人びとは疲労感を深く漂わせていたのであった。
 他方、時折通りすがる山深い中山間地域の「農産物直売所」では、年配の女性たちが輝いていることを不思議に思っていた。そして、2000年の夏、日本のチベットとされていた岩手県北上山中の川井村(現宮古市)で初めて「農産物加工場」といわれるものを訪れる機会があった。それは衝撃であった。1見、普通の食品加工工場に見えたその中で、年配の女性たちが活き活きと輝いていたのであった。疲弊しているはずの中山間地域の片隅で、何かが起っていることを知る。以来10年、中山間地域を訪ね歩く日々を重ねていくことになる。
 その後、中山間地域の「農」と「食」の周辺に惹きつけられ、各地で多くの農産物直売所、農産物加工場、農村レストランにめぐり会い、また、条件不利の地域で取り組まれている集落営農、農業法人化の取り組みなどに出会い、地域産業問題に従事してきたはずの自分の視野の乏しさを痛感させられることになる。

 そして、2000年代に入り、効率性を求めた「平成の大合併」が推進されていく。2000年の頃にはその数約3230といわれた市町村が1気に減少し、2010年には1700ほどになっていった。特に、「村」の減少は著しく、この間、600ほどの村が180ほどに減少したのであった。その結果、新たな合併市の中には市域が6倍になったケースも報告されている。1定のまとまりのあった市街地に広大な中山間地域が付け加わっていった。町村の役場は縮小され、そこに暮らす人びとに辺境性を深く痛感させているのである。
 だが、それにも関わらず、そこで人びとは働き、知恵を絞って自然の中で暮らしている。多くの中山間地域では30年ほど前に比べ人口は2分の1、3分の1に減少し、高齢化率は40〜50%にも達しているのだが、残された人びとは地域の資源、可能性を探り、必死に新たな取り組みを重ねていた。繁栄と成熟の1つの極みがそこに拡がっているようにみえた。特に、そこでは地域を丁寧に見つめ、そして、そこに暮らすことに新たな価値を見出し、「自立」と「産業化」が強く意識されていたことに深い感銘を覚えた。それは、激動の60年の繁栄の後の私たちの向かうべき姿のように思えた。
 中山間地域の「自立」と「産業化」、それは成熟化し、高齢化に向かう私たちの挑戦すべき「未来」ではないかと思う。激動の60年に踏み台とされてきた中山間地域、そして、そこに残された人びとは、逞しく新たな生き方を求めて「未来」に向かっているのである。それは新たな「価値」の創造といえるかもしれない。
 そのようなことを意識し、本書は全国の中山間地域の片隅で取り組まれているいくつかのケースに注目し、世界に例のない成熟社会、高齢社会に踏み込みつつある私たちの「未来」を、「地域産業」という視点から語っていくことにしたい。中山間地域の人びとの取り組みから、私たちは新たな「価値」に目覚めていくことになろう。私たちは世界の誰も経験したことのない、むしろ挑戦すべき「可能性」に満ちた新たな時代に生きているのである。

 なお、本書の各所に登場する中山間地域の具体的なケースは、私がこの2〜3年の間に「現場」を訪れた300ほどのケースの中から、特に深く感銘を受けたものを採り上げている。いずれのケースの場合も、条件不利の中にありながら、そこに集う人びとは「輝き」、私たちの「未来」を語ってくれた。それは新たな「価値」の創造と思えるものばかりであった。ここから日本の「地域」「地域産業」は大きく変わっていくのであろう。
 新たな「うねり」は「辺境」から始まるとされている。まさに中山間地域に反発のエネルギーが蓄積され、それがいま大きく解き放たれようとしている。その同時代に生きる者として、その「感動」を共有し、広くその意味を伝えていかなくてはならない。私たちは、まことに興味深い時代に生きているのである。


登録情報

  • 単行本: 228ページ
  • 出版社: 学芸出版社 (2011/1/1)
  • ISBN-10: 4761525002
  • ISBN-13: 978-4761525002
  • 発売日: 2011/1/1
  • 商品の寸法: 18.8 x 13 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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 関さんの本は随分持っているが、共著が大部分なので、物足りない面もあった。
 今回の本は一人で農山村で起こっている自立と産業化へむけたうねりを書き下ろされているので、一本、筋が通っている。
 直売所や加工所など色々な本で取り上げられていることが総覧されているので、関さんが農山村になにゆえ日本の未来を見ようとされているのが、その考えがよく分かる。
 閉塞感を感じている人に、うってつけの一冊。
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