竹書房文庫10冊目となる「超怖K」はついに平山夢明、満を持しての単独著。「平山、ふり出しに戻ります」と題した前文から既に、迫力と凄みがある。新旧さまざまな実録怪談筆者たちがひしめきブームに湧く現況を喜び、中古エンジン、ロートルと自らを謙遜しつつ、「ガチ怖最優先」、平山個人として「クオリティーを保つ」と自らをあえて崖っぷちに追い込むかの如きさらなる切磋琢磨を誓っているのだ。そこには「実話怪談」ジャンル勃興第一人者としての並々ならぬ決意と自負が表れている。
「超怖」シリーズは様々な紆余曲折を経て今に至っている。勁文社時代の97年、通算9巻目での休止。読者の熱望を受け99年に甦ったものの、再び休刊。その後勁文社倒産、竹で3度目の生を受けるまで長いブランクが生じる…。
勁文社での「復活」と全く同じ99年6月には文芸専門誌でない媒体に中編小説「ミサイルマン」が発表され、翌7月「東京伝説」が初刊行されている。文も人柄も飄々として見える平山だが実はその頃、長いスランプの極限で「お化けはやめ小説を」と周囲から二者択一を迫られていたそうだ。苦しみ抜いた末に下した決断は「小説も、実話怪談も両方」どころか余人の追随を許さぬ新ジャンル、狂気系ヒト怪談の創出…3本柱で突っ走る事だったのだ。
折しも今回の「K」刊行直前、幻の「ミサイルマン」が書籍化の陽の目を見た。推協賞、このミス1位獲得と作家としてやっと認められた平山だが、ミサイル刊行も相まって99年頃の「怪談を捨てぬ」決意を改めて肝に銘じたのではなかろうか。「K」は静謐さ、情愛、幼子への慈悲、妖怪など勁文社期を想起させる温かい話の中、人の醜さ残酷さを暴く冷徹さも随所に刻み込まれ”平山節”全開。作家・平山夢明の「超怖」愛、ひいては実話怪談愛に満ちた、渾身の書だ。