この中で犯人グループは朝日新聞東京本社銃撃(同年1月)も自分たちの犯行であることを明らかにしたが、その後さらに、中曽根・竹下両元首相への脅迫状送りつけ、江副リクルート元会長宅への発砲など、同組織が犯行を名乗る事件が連続した。警察庁は一連の犯行を「116号事件」として広域指定したが、事件発生から15年たっても実行犯を特定できず、2002年の5月をもって時効が成立したのである。
しかし、著者はこの結果に納得しない。116号事件を思想犯罪とした捜査本部の見込み違いが捜査を迷走させたとみる著者は、80年代の経済犯罪の裏でうごめいた人物たちに肉迫していく。すでに「3億円事件」と「グリコ・森永事件」の調査取材に実績をもつジャーナリスト?の気迫がすごい。
事件記者というより、心根の優しい「街ダネ」記者の小尻が、なぜ殺されなければならなかったのか。「赤報隊」が「日本の伝統文化を否定してきた」朝日新聞に「天誅」を下すために、たまたま居合わせた小尻を射殺したのか。著者はこの疑問を解くために、小尻記者の取材活動の跡を執拗に追い、ついに同記者がそれとは知らずにつかんだ重大な事実と実行犯「真田」に行き着く。
「真田」が私淑する「闇の実力者」に仕掛けるインタビュー。「真田」から無言の自白を引き出す一気呵成の質問攻め。命を賭した著者の意気込みに背筋が寒くなる。しかし、あと1回会いたかった「真田」は“急病”で死ぬ。かくて116事件は犯人が上がらないまま終わった。
「もっと、彼から、話を聞き出しておくべきだった…」
2002年2月中旬、大阪府郊外の山中にある「真田」の墓の前で、著者は悔恨の情に言葉を失っている。これがプロローグである。そからの展開は、小尻記者がつかんだ「とてつもない真実」が明らかにされるまで、息つく暇もない。(伊藤延司)
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関西の闇社会、スキャンダルに名を連ねる元首相、エトセトラエトセトラ。胡散臭い状況証拠は積み重ねられる。取材の過程、幾度となく真相を知る?者から恫喝があったという。毎回毎回、難事件の真相に深く、果敢に切り込む、著者の無事を祈らずにはいられない。
駅のキヨスクで買って旅先の車内にて読むのに最適。
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