3人の論者による、文部科学省「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」批判。「日本人は英語が使えるようになるか否か」を論じた本ではなく、経済界と語学産業界からの強い要望に応えるかたちで文部科学省の進めている学校英語教育強化路線に異を唱える内容。
3人の危機感は深刻で、理念無き日本の英語教育政策がこのまま進められれば、日本人の言語運用力は無茶苦茶なことになってしまうという(「まさかそんなことになるはずがない」と誰もが思っている「日本語ができない日本人」が本当に生まれ得ると考えているようだ)。3人が目指しているのは、「英語を身につけるのは簡単なことではない」という、自明でありながら多くの人々が受け容れるのを拒む大前提を徹底的に知らしめること。世間を味方につけることによって、文部科学省が既定路線として進める政策に歯止めをかけることを目論んでいる。
冒頭で山田が激しくアジった後、それぞれの提言が示される。それらの提言をテーマとして繰り広げられる3人の鼎談が本書の大部分を占めている。3人の共通意見としては、英語教育よりも「ことばの力」を伸ばす教育を優先すべきこと、学校教育現場ですぐに使える教材の開発を急ぐこと、英語教員の養成・研修制度の改革も視野に入れること、等々。
装丁もお洒落で、この薄さ。関心のある人ならサッと一読できるだろう。まさにそういう本を目指したのだろうが、いささかサラッとし過ぎのような気もする。特に3者の意見は、当人にとっては三者三様なのだろうが、私のような門外漢から見れば非常に似通っている。基本的な問題の捉え方が共通しており、互いの意見交換においても「その通りだと思います」とすぐに収束してしまう3者の鼎談には、悪く言えば「仲良しグループ」の放つ甘さが感じられた。鼎談という形式をとらず、論点を整理した上で、3人の主義主張を簡潔に示した方が良かったのではないかと思う。