本書は長野県知事を二期つとめるも、三期目を迎えることが出来なかった田中康夫氏が
長野に何をもたらしたのか、特に談合における攻防に焦点を当てたものである。
全6章のうち4章までが談合を知る者や何らかの形で田中知事に関わった人たちによる証言から成る。
まず「なぜ談合をするのか」に始まり、次に「なぜ談合がなくならないのか」が示される。
そして田中知事がそこで何をしたのか、どう評価するべきかが語られる。
田中氏の改革は、指名競争入札から一般競争入札への変更だ。
この手法は識者から示されることは多いが、徹底したのは長野と宮城だけである。
「徹底する」ということが大切なことで、
一般競争入札と言いながら参加できる業者に条件を付けることで参加業者数を絞り、
(意図的に)談合を容易にしている自治体が大半であるのが現状だ。
田中氏は既得権益を破壊したから大きな反発を招いた。
入札改革のみならず、マスコミに対しても「脱・記者クラブ」宣言したものだから、
既存の大マスコミも敵に回してしまった。
かくして田中知事はワイドショー的な扱いを受けることになり、政策の評価は隅に追いやられた。
新聞とテレビしか見ない人にはただ騒動の渦中にいる人としか映らなかったかもしれない。
しかし任期中に借金を923億減らし、収支を黒字に転じたことこそ評価されるべきではなかったか。
泰阜村村長・松島貞治氏が語るところに選挙での敗因が要約されていると思う。
すなわち、田中氏は政治家としては優れていたが、組織の長としての掌握が十分でなかった。
そして、県民がその政策を評価するだけのレベルに達していなかったことが問題だと。
長野県民の選択を見ると、早すぎた知事だったのだろうかという思いがわいてくる。