この本における上田紀行氏の言説には観察、問題描写、提案といった要素が織り込まれている。
凡庸な社会科学者ならば、精緻なデータを積み上げて、微弱な結論を導き、示唆と称してさらに主張をオブラートに包み込みこむことに終始する。その言説が学術論文ならば、さらに輪をかけて狭隘な示唆にとどまることになる。
この本の言説はいたって単純明快だ。著者は世の中をこのように観る、このような問題がある、その問題の背後にはこのような構造がある、その構造を転換するためには、このようにすべし、と。
著者の言説空間が狭隘な学術論文にとどまらないことは必然でもあり、また広く一般読者向けに書かれている点は、私のような一般読者にとっては福音でさえある。
著者の生の体験談が随所に織り込まれ、特殊な文体世界を形成している。それは決して露悪趣味ではない。著者は、実証主義的な作法では捉えきれない大きな問題を描写し、その解決策を模索するという試みを本書の中で展開している。
その意味で、狭い意味での学術的作法への準拠など見向きもしないそぶりを垣間見せつつも、文化人類学の観察的参与という方法を大局的な視座から極めていると言える。
大切なものを支え合うことの大切さが「肩の荷」という言葉に込められている。読者は終章に向かって次第に気がつくことになるだろう。「生きる意味」と合わせて読むことをお勧めしたい。