我々は、こうしたことの原因をつい話し手の側の問題ととらえがちである。だから「怒らせたのは自分の話し方に問題があったのでは」「相手が無口だから仕方がない」「もっと押せば売れたのかも」などという分析をしてしまうのだが、実は原因は、「話し方」よりも「聞き方」にあることが多い。
本書では、この「聞く」ための技術を、サンプル文を中心に解説していく。「基本編」では、ある信託銀行の営業スタッフ向け研修でも使われているという「オープン・クエスチョン」「クローズド・クエスチョン」の使い分けのテクニックから、コーチングでも使われる「夢や理想を引き出す」テクニック、あいづちやジェスチャー、パーソナルスペースの取り方など、さまざまなテクニックが紹介されている。相談ごとの場合は横向きに、交渉ごとの場合は正面に、といったポジショニングの説明などは、接待で店を選ぶ場合や、オフィスの接客テーブルを新規に購入する場合にも参考になる。
「実践編」では、「基本編」の内容を受けて、相手にとって言いにくい話をうまく聞き出す方法、上司からいいアドバイスを得る方法、部下の不平・不満を聞き出す方法、口の重い人に話をさせる方法、話が終わらない人への対処法、異性や年齢の離れた人との話し方などが紹介されている。上司や部下、取引先とのコミュニケーションがどうもしっくりいっていない、という人は、サンプル文を読めば「なるほど、こうすればよかったのか」と感心させられる。
本書のサンプル文は、あくまで「聞く技術」の説明のために例として使われているものであるため、ここで使われているフレーズをそのまま使うのは賢明ではないかもしれない。だが、著者が言っている内容を正しく理解して応用すれば、プライベートやビジネスにおける人間関係を円滑にすることができるだろう。新入社員用のテキストとして、あるいは営業スタッフの心得として、ぜひ一読をおすすめしたい。(土井英司) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
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「ものは言いよう」とはよく言ったもので、些細な一言、もしくは一つの挙動によって、相手に与える印象が大きく変わるもの。
この本はその「一言をどう変えればいいか」ということを、「聞く側」の立場になった場合に焦点を当て、数々の場面設定の下に会話例をあげ、解説している。リアクションはどう取れば、相手が気持ちよくなり、円滑なコミュニケーションが築けるかということ。「聞く側」に立った場合の心理メカニズムを理解することは「話す側」に立った場合にも活かされるのだろう。
ここまでだと、他にも山ほど類書が出ていると思うかもしれないが、この本の特徴としてはかなり実践的という点があげられる。その理由は細かな場面設定と、「言ってた、言ってた!」と思わず呟いてしまいそうな会話例(ダイアログ)があること。著者の伊東氏ならではの、センスの高さが伺える。
当然、内容のすべてが「目からウロコ」というわけではない。無意識のうちに「OKダイアログ」を自分がやっているケースがあるからだ。しかしその反面、自分の経験、傾向が「NGダイアログ」に当てはまっていた時の、解説のわかりやすさ、説得力は一読の価値があるだろう。読みながら自分自身を採点するような感覚すら持つ。
この本は実践的たらしめているその場面設定と会話例によって、読む人に大なり小なりの「気づき」を与えてくれるだろう。これがその他の心理本と一線を画すところである。
特に「悪癖」をもった優秀な人。これを読むことで、その力を如何なく発揮できるようになる。かもしれない。
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