かなりの良書だと思う。「読み物としては面白いが、実践では使えない」という感想も散見される。たしかにふざけているとしか思えない箇所もある。だがそれは、筆者が「正しい情報を提供する」ことだけでなく、「読み手に伝わる文章を書く」ことを意識しているからだと思う。
この手のモテ本は、(その著者が男であれ女であれ)、「自分がいかにモテる人間であるか」ということを、やたらと匂わす本が多い。私自身は、そういう書き手の「上から目線」が嫌いだった。だから私は、「かつては全くモテなかった人間がモテ本を書いている」という事実に対する、筆者の「恥じらい」を、非常に好ましく思うのだ。
この本は一見、「ウケ狙いのふざけた本」に見える。だがそれは、筆者の透徹した自己批評の精神が、この書き手に「偉そうに、かつ真顔で」モテ指南をさせることを許さないからだと思う。ゆえに筆者は、モテ本の書き手でありながら、みずからを落として笑い飛ばす、という荒技をやってのける。そのスタンスは、筆者が知性的で、モテる男であることを示しているように、私には思える。だがそれゆえに、読む人によっては、ウケ狙いでふざけているように見えるのかもしれない。
「執着の分散理論」も、「うわっつらKINDNESS理論」も、「自虐ギレ理論」も、「デビュー理論」も、「DK心変わりの理論」も、「アリアリ理論」も、わたしの経験したかぎりでは、ほぼすべて真実だった。
単なる性欲を「恋愛感情」であるかのように錯覚し、一途な自分を美化してはならない(執着の分散理論)。具体的な行動を起こさずに、自分の「優しさ」が相手に伝わるなどと期待してはならない(うわっつら理論)。女性の心変わりを、甘く見てはならない(DK理論)。
どの理論も、恋愛というものに幻想を抱いている(そのため具体的な行動を起こせずにいる)人々に、厳しい現実を突きつけるものだと思う。ゆえにこの書き手は、それを「笑い」によってパッケージングして、読者に差し出しているのだ(たぶん)。
願わくは、この本が、単なるネタ本として消費されるのではなく、(私のような)奥手の人間が、「恋愛の大海」にむけて第一歩を踏み出す契機になることを望む。実践すれば、確実に「効く」から。