イタリア、そして、都市に対する今までの常識を覆してくれる本。
イタリアって、ファッションやアート・デザイン、オペラ、料理、サッカーだけではなかったんですね。
イタリア人が、都市を守り、風景を育てる努力を重ねていること、それも哲学思想にまで踏み込んで取り組んでいることが、美しい写真や分かりやすい図解で説明されています。(新書でこれだけ多くの図解が入っているのは見たことがありません)
日本のまちがなぜ「シャッター通り」だらけになって衰退し、イタリアのまちが観光客で賑わっているのか、その理由が「修復型まちづくり」にあると著者は強調します。「修復」を現地で手がけた実体験にもとづいた展開は、とても説得力があります。(しかも日本では都市計画を仕事にしているとか...)
「都市再生と都心部活性化のしくみ」は、専門外の私にも、日本の「規制緩和型まちづくり」の欠点が何なのかを、分からせてくれます。
「修復」については、映画『冷静と情熱のあいだ』のエピソードを紹介しながら、「レストラン」と「レスタウロ」が同源の言葉で、どちらも「癒し」を意味に含んでいる、という説明に惹かれました。
「あとがき」にもありますが、この本は、イタリア文化論、都市論、哲学論、日本文化論と、多くの顔を持っています。一冊の新書に盛り込むのは無謀という感じがしますが、全体を「修復」という話題でつないでいるおかげで、本全体に統一感が生まれています。
「帯」に「そして、東京は森に還る。」とありますが、それと本文前段の「イタリア都市」や「修復事情」の話と「何の関係があるの?」という疑問が、最終章のラスト4頁で解消します。そして、序章の「100年後人口半減」のショッキングな導入が、ちゃんとラストでつながっていることに感心しました。
そんなストーリーの展開が、読書にスリルをもたらし、一般教養書のレベルを超えた「新鮮な印象」を残してくれました。