昨秋国会や三菱重工業が「サイバー攻撃」を受けたという報道がありましたが、それについてほとんど何も理解しないまま右から左へと流れて行ってしまったこともあり、それについて多少なりとも知っておけたらと思い、本書を手にしました。
評者自身がITに疎いという事情もあり、普段あまり馴染みのない用語も散見されましたが、全体として入門者にもそれなりにやさしく描かれている印象を持ちました。
本書は導入部で、201X年東京隣県の湾岸エリアにサイバー攻撃がなされたら、というフィクションから始まり、先ずはその用語の持つイメージを具体的に喚起をしてくれていると思います。それに続いて本論で、サイバー犯罪・サイバー戦の変遷と実態、サイバー戦の手段と実戦例、言葉の定義・分類、サイバー戦の特徴(通常の戦闘との比較)、それに向けた世界各国の動きや国際ルール作りに向けた現状、日本の立ち遅れた現状と改善に向けて、といった内容が記されています。
著者は、自衛官出身者とのことですが(システム関係の幕僚やシステム防護隊初代隊長などを歴任、とあります)、筆致は寧ろそれゆえか非常に穏やかです。著者の真意とも大きく関わっていると思われる、P.219の
本来、「国家の守るべきものは何か、それをどうやって守るか」という大方針(国家戦略)があって、・・・・・このような省益優先の迷走を見るにつけ、そもそもこの国に確かな国家戦略はあるのか、と心配になる。
という件でも、「ない」と言い切ることなく、控え目な記述にもどかしさと安心感の入り混じったような感想を抱きました。
細かいお話としては、自衛隊が「警察予備隊」として出発したために、世界各国の軍隊に適用される「ネガリスト方式」ではなく、警察に適用される「ポジリスト方式」が採用されていて、国家防衛の任務達成上大きな障害になっている、というのは初めて教えていただいたこともあり、強い興味を感じました。また本論とは直接は関係ないにせよ、北朝鮮の惨状について僅かながらでも教えて頂きました。