「うつが流行?」してきたころ,わたしの勤める会社でも,うつと診断されるものが出てきた。そして,精神科の診断は,いったいどのように行うものなのだろうかと疑問に思った。医師の主観や,これまでに診断した患者の状態,教育を受けた環境などによって,診断が異なるのではないかと。
現在のうつの診断は,ベテランがしても新米がしても変わらないように,その診断基準が明確になっているらしい。それに基づいて診断するのが一般的なのだろう。しかし,その機械的な診断の限界が見え隠れしているようだ。また,病気の原因を考慮しないために起こる問題もある。
たとえば,非常に責任感が強く,几帳面な人が仕事に追われた果てにうつ病になる。それでも責任を果たそうと働き続けてさらに悪化して休職。一方,仕事はほどほどで,趣味に生きていた人が,失恋で大きく落ち込み,うつ病と診断されて休職。病気と診断されれば同じことだと,理屈はわかっても,なかなか納得できるものではない。
うつ病がアイデンティティになったり,病気療養中に気分転換と海外旅行に出かけたりするものがいる一方で,うつ病と知られると会社をやめなくてはならないからと,病状を隠して働き続けるものもいるという。うつ病も二極化しているようだ。
うつ病をもう少し分類して,それぞれに適した治療をする必要もあろう。仕事のストレスによるうつ病が増えている,という話は一般にはうなずいてしまいそうだが,それに対する疑問も書かれている。このようなことはもっと研究をして,精神科の診断をより確かなものにして欲しいものだ。
なお,著者はこの本で何を主張したかったのだろうか。本の展開もしっかり組み立てられているようには思えなかった。興味深い話だが,だらだらと聞かされているという印象。本書の内容を,資料や実例を踏まえながら,主張とともにまとめ上げたものをぜひ読みたいと思った。