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39 人中、36人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「私」の問題に真剣に向き合うための本,
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レビュー対象商品: 「私」を生きるための言葉 日本語と個人主義 (単行本(ソフトカバー))
『「私」を生きるための言葉』というタイトルに反応する人は意外と多いのではないか。本書は、この問題に格闘してきたある精神科医が、「私」(あるいは「自分」「個」というもの)に対して悩んでいる読者に対して、1つの明確な答えを提示する読みやすい啓蒙書である。日本人には日本人独自の自分探しがある。それは、日本では、まず集団に埋没することを教えられ、「個」を獲得することが後回しにされるからではないか。 たとえば、日本語には「空気を読む」という独特の表現がある。空気を読むとは、多くの者が考えていると想定されるコンセンサスを、誰も言葉にすることもなくなんとなく察知することだと言っていいだろう。子供のとき、それができない者は、なんとなく仲間はずれにされたり、いじめられたりする。そういった「訓練」の中で、私たちは「空気を読む」能力を身につけていく。 しかし、いったん「空気」の中に入ってしまえば、言葉による対立を避けながら、私たちはその中で快適に(あるいは生ぬるく)過ごすことができる。それと同時に、その空気を脅かす者を「KY」(空気が読めない)とさげすんで、その「外部者」(≒他人)を排除したり、仲間に入るかどうかの試煉を与えたりする、あらたなメンバー(あるいは加害者の1人)になっていくのである。いじめが日本文化に根ざしたものだと言う人は、おそらくそういうことを考えているのではないか。 日本人の多くにとって、この問題はこれで終わりである。だが、それに脱落する者もいる。「空気」が支配する世界には、「私」というものが抑圧され、「集団の一部としての自分」しか存在しないからである。感情的な反発だけなら意志の力でなんとか生きぬくことは可能かもしれない(要するに妥協するわけである)。だが、その日本文化のしくみに根本的に(≒体質として)ついていけなければ、日本社会を抜け出すしかない。抜け出せなければ、社会がすべて敵に見え、あるいは自分に非があるのではないかと自分を責め続け、最後は病気になってしまうしかないのかもしれない。 持論が長くなってしまったが、要するに、本書はそんな日本社会の「脱落者」のために書かれた本である。 「0人称の世界を抜け出して、1人称を獲得せよ」というのが本書の主張である。この近代的な問いは、すでに夏目漱石によって提示されている。だが、漱石らが庶民に縁遠い「古典文学」になってしまった今、この日本社会に普遍的な問題をもっとわかりやすい言葉で問いかける者が必要である。この薄くて読みやすい本は、日本人が宿命として抱え込んでいるそういった自我の問題を、揺らぎのない視点から語りかける。 私が書いてきたことが納得できる人なら、本書のすばらしさがわかってもらえると思う。自分を苦しめているものの正体さえわかれば、戦いはもっと楽になる。もちろん、納得できない人、理解できない人も多くいるはず。そんな人は、日本文化にみごとに順応できた人だろうから、おそらく本書の意義すら見えないのではないか。この問題は、そのように、見える者には見え、見えない者には全く見えないというやっかいなタイプのものである。 本書には、この問題と格闘してきた漱石をはじめとする先行者の引用も多く、多角的な視点で問題の本質を見ることもできる。本書を必要とする人が真剣に向き合う価値のある本だと思う。
20 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
見える方には窓、見えない方には壁。,
By 白猫 - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 「私」を生きるための言葉 日本語と個人主義 (単行本(ソフトカバー))
今の日本に、閉塞感や空々しい感じ、しっくり来ない感じ・・・感じ取り方は様々だと思いますが、どうしようもなく受け入れられず孤独な感覚を感じたことはないでしょうか。そのような問題意識を持つ方に是非お勧めしたいと思います。私自身読み終わった後、今までどうしても見えなかった姿無き敵をはっきりと見せて貰えたようなすっきりとした気分になりました。前著以上に、自分が自分であることを責めなくても良いのだ、という安堵感を頂きました。人の受け売りではなく、本当の自分自身の意見というものを持つと、今の日本では相当苦労を強いられます。そう言った経験のある方であれば、すぐおわかり頂ける内容だと思います。海外生活の長かった方や日本社会の特殊な雰囲気に興味のある海外の(日本語に堪能な)方にも、得るところの多い本だと思います。 この本で果敢にも取り上げられている問題は、これから益々大きくその姿を顕わにし、私たちは対応を迫られるでしょう。人生本来の深い喜びを味わう為にも、是非読んで頂きたい本だと思います。タイトルからも分かるように、語学的な内容が続くので、語学関係の書物に触れたことのある方には特に受け入れられやすいかもしれません。
20 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「ダイヤモンド・オンライン」で知りました。,
By くれよんツンちゃん (東京都大田区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 「私」を生きるための言葉 日本語と個人主義 (単行本(ソフトカバー))
前著『「普通がいい」という病』は、著者が精神科医として蓄えてきたテーマをいろんな角度から捕らえて網羅的に扱い、詩人や哲学者などの言葉を引用しながら論じたものでした。その中で森有正の言葉として登場していた「日本人の0人称」という問題を、本作では特に深め広げて扱っています。私は「普通がいいという病」の方も大変興味深く読みましたが、その中ではこの「0人称」の部分がちょっとよくわからないというか、著者自身もまだ完全に読者に説明する準備ができる前に書いておられるのではないかと感じるような、また逆に言えば、それだけ重要だと思って入れ込んでおられるからこそ説明がやや強引になっているというか、そんな感じを受けていました。もう少し説明してくれないと分からないと。 今作のあとがきまで読んだら、著者も、前作はたくさんのネタを扱ったので、「日本の精神風土の神経症性」とだけ書いたがそれを説明しきるページ数が無かった、というようなことをおっしゃっていました。その神経症の原因となっているのが「日本人の0人称」で、というのがお話です。読者がきちんと分かるところまで論じ切ってくれているので消化不良も読み間違いもなく読めると思います。 もっとも印象的に残った文は、 (夏目漱石の言う)「この『自己本位』というものを各人が掘り当てる作業をガイドすること、それが私の日々行なっている精神療法です」 という一文でした。 また中田英寿、イチロー、村上春樹らの引用のしかたも、実に必然的というか、お見事だと思いました。 早くも次回作が楽しみです。
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