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最も参考になったカスタマーレビュー
4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
平成の八咫烏はどこに導くのか,
By レイス "エテルナ・サウダージ" (東京都港区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 「神武東征」の原像 (単行本)
本書は、在野の古代史研究家である著者の第2作目。前作では全国の巨大古墳につき、いわば横断的体系的に検討を加えたのに対し、ここでは「神武天皇」という古代史の大きな謎の一つにスポットライトを当て、見事な説得力をもって深度ある議論を展開する。歴史教科書を巡り喧しく意見が飛び交っている昨今、津田学説の無批判的な受容による取扱いしか受けてこなかった神武天皇について、優れた著作が出版されたことは悦ばしい。ところで、筆者は、「はじめに」において、「古代の歴史探求のなかで偶々原型(真実?)が見えてきた」から本書を著したのだと言う。とはいえ、論理的合理的な検討が続く合間に、子供の時分に見た記憶がある『國史畫帖・大和櫻』の絵とか、北九州市八幡地区の南にある皿倉山に登る機会があって、その山頂から北方の平野部を見ると、「この地が上古から交通の要衝にあったことがよく理解された」といった記述、あるいは古代の「一世代の実年数」について、多くの古代氏族系図の検討を通じて、現代よりやや短い「約25年ほどと実感していた」などと書かれているのが目に留まる。本書において著者は、決して「偶々」得られた研究成果だけを書いているわけではない。むしろ、これまでに出された優れた学説を踏まえたうえで、これと調和する形で、長年の実体験に裏打ちされた独自の学説を要に、神武天皇をめぐる全体像を提示する。 無論、自説の展開に当たり、著者は、様々に関連する膨大な資料を十分咀嚼する。ただ、そればかりでは命の通った歴史研究とはいえまい。ライフ・サイズの生き生きとした歴史像を総合的に探索するために、場所と時間とが十分に再検討され、そのうえで新しい原像が提示される。アカデミズムにしばしば見られる無味乾燥な研究、あまり明確ではない歴史像―その研究や主張が読者によく伝わってこない―に対して、既存の研究機関に属しない者による研究に意義があるのも、人生において果たしてきた役割や視点が著書の背後にあって、それが如実に感じ取れるからではなかろうか。古代史について建設的な議論をするための一つの基礎材料として、本書が活用されることが望まれる。
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