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「痴呆老人」は何を見ているか (新潮新書)
 
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「痴呆老人」は何を見ているか (新潮新書) [新書]

大井 玄
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (18件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

「私」とは何か?「世界」とは何か?人生の終末期を迎え、痴呆状態にある老人たちを通して見えてくる、正常と異常のあいだ。そこに介在する文化と倫理の根源的差異をとらえ、人間がどのように現実を仮構しているのかを、医学・哲学の両義からあざやかに解き明かす。「つながり」から「自立」へ―、生物として生存戦略の一大転換期におかれた現代日本人の危うさを浮き彫りにする画期的論考。

出版社からのコメント

痴呆は病か、老いの表現か----、社会医学と終末期医療の第一人者である著者は、死に近づいた痴呆老人への診療を通して、根本的な疑問を抱きます。人間にとっての言葉と記憶、環境と倫理、人格と生命の働き......やがて浮かび上がる、生物として危機的な転換点に置かれた現代の日本人。「私」とは、「世界」とは何か? 自身の体験と深い知見によってつづられた論考は、今日ある幾多の社会問題に不可欠な視座を提供しています。

登録情報

  • 新書: 223ページ
  • 出版社: 新潮社 (2008/01)
  • ISBN-10: 410610248X
  • ISBN-13: 978-4106102486
  • 発売日: 2008/01
  • 商品の寸法: 17.4 x 11 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (18件のカスタマーレビュー)
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29 人中、28人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 全日本人必読!, 2008/2/9
レビュー対象商品: 「痴呆老人」は何を見ているか (新潮新書) (新書)
 これは凄い本だ。
 最初はちょっと扇情的なタイトルに、単純というか無節操な野次馬的気分で魅かれて手にしたのだった。自分にとってはまだ他人事の、しかし今や高齢化の進展でごく身近なことになっている痴呆という状態は一体どういうものなのか、を解き明かしてくれる、いわば「恐いもの見たさ」を満たしてくれる本か、と。
 そんな浮ついたものではなかった。ここには極めて根源的な、生と老、人間存在〈自我〉のメカニズム、その社会文化的な文脈との関連、果ては現代社会の直面する難問に至るまでの深い心理学的哲学的考察が展開されていたのだ。
 冒頭から引き込まれる。若き日の医師たる著者が遭遇した悲惨な痴呆老人たちとの出会い。それに〈恐怖〉し、決して治せない無力感に襲われ、自信を失い、うつ状態にまで陥った体験。しかし、懸命に接する中で、老人たちの苦痛を和らげることが出来る事に気がつき、そういう医療のあり方に目覚めて自ら癒された、という体験を正直に語る、その真摯で誠実な態度に感じ入ってしまった。

 痴呆は老化による記憶障害に始まる。自我を形成し人を人たらしめているのは、言葉と記憶であり、その機能が衰えることにより、世界とのつながりが失われて行く。それによる不安が「情報」よりも「情動」の優位を招き、見た目の痴呆を惹起し、過去の記憶(その幸福な時代)に逃げることで安心と生命を維持するという機序があり、傍目からはとんでもなくボケてしまったようになる。
 そもそも世界認識の尺度はその個人の主観的なものであり、なおかつ生きることを最大目的とする自己保存本能としての生命力の発露である。生きるためには人格の変容すらいとわない生命力というものが根底にある、と。様々な事例と、先人たちの探求の足跡を辿ることでそれが明かされて行く。

 ところが、考察はそれだけにとどまらない。老いによる痴呆の探求から見えて来た〈つながり〉の喪失という作業仮説は、個人がアトム化されたホッブス的社会(=アメリカ型自立個人主義)の危うさへの警告となる。伝統的倫理が崩壊し、地域や家族のつながりが絶たれた今の日本社会に現れた〈ひきこもり〉もまた同じ機序によるものと解明される。鳥肌が立つような展開であり、非常に説得力を持つ。

 超高齢化社会を迎えた日本に住む我々、そしてヒトとしていずれは老いて死ぬ運命にある全ての人間が読むべき本だ。絶対の必読!!
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52 人中、49人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 痴呆老人から見える日本社会の病理, 2008/1/26
レビュー対象商品: 「痴呆老人」は何を見ているか (新潮新書) (新書)
人間が痴呆になると、その目にはどんな世界が
見えているのか?という問いに対する考察から、
「痴呆」すなわち認知機能の低下は、外界との
つながりが失われていくことと分析しています。
痴呆の象徴と見做されている異常行動は、
つながりの喪失を自覚させられることにより
不安が表出したものであり、環境によっては
「病気」とされないことも可能としています。

筆者は最近使われだした「認知症」という言葉を、
痴呆老人への誤ったマイナスイメージを背景にした
単なる看板の架け替えであり、それ自体が
世間の誤った認識を改善させる効果はないと看破し、
あえて「痴呆」という言葉を使っています。
常々「しょうがいしゃ」などという言い方に胡散臭さを
感じている私は、この点にも好感を持ちました。

話題は痴呆老人だけにとどまらず、
生きていく上で必要な葛藤を自分で処理できず
うつ等の病気と診断してもらおうとする人の心理や、
外界とのつながりが失われた存在としての
「ひきこもり」とそれを生む社会についての考察など、
非常に濃い内容で、かつ説得力のある本です。
日本社会と、現代の日本人の心が抱える問題を
明確に分析した名著だと思います。
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22 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 痴呆老人から見る、私達の世界, 2009/6/3
レビュー対象商品: 「痴呆老人」は何を見ているか (新潮新書) (新書)
私は、重い病気にかかり、他者との関係が全くと言っていいほど、無くなった時があった。
その時の記憶を思い起こすと、「孤独」という言葉が、しっくり来るくらい人との繋がりを感じられなかった。
私は、その時の「孤独の世界」が痴呆老人の見ている世界と通じるのではないかと思い、本書を手に取った。

本書の中で、老人の諸症状の原因は、「人間関係の悪さ」にあると言う。なるほど、私が病気した時にも同じような状況であった。
私は老人と言うには、程遠い年齢だ。だが、当時を思い起こすと、幻覚や妄想、夜間せん妄などもあったように思う。夜も眠れない日々が続いていたのは、まさしく「人間関係の悪さ」が原因だったのだろう。世間一般では、”若者”と言われている私が、だ。

本書では、他にも、「他人とコミュニケーションを取るための入り口」についてや、「人がパニックに陥った時に見られる痴呆老人との類似点」なども挙げている。

私が、本書を読んで深く思ったことは、「私達は痴呆老人だから特別に起こる症状」だと思っているが、本当はそうではないのではないか、という点だ。
私達が、他人と繋がりを持てなければ同じように成り得るし、同じような反応をしてしまう場合があるということ。

私は、痴呆老人からは、日々を生き抜く上で、学ぶことが多いのではないかと思う。そういう意味で、本書はとても内容が濃く、とてもすぐには読みきれない内容に思えた。
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