だが著者は、「そのような認識は思い込みに基づく幻想にすぎない」と喝破する。それは最近の実証的歴史研究の成果に照らしても明らかなのだが、これが意外と世間では知られておらず、歴史の専門家でさえ、少し分野が違っただけで知らない者が大多数なのだという。世間で知られていないことがそれほど大きな意味を持たないなら、それでもかまわないのかもしれないが、この「幻想」はわが国の首相の靖国神社参拝問題や政教関係訴訟、さらには教科書問題や外交関係にまで影を落としている。
“虚像”が誰によって、いかにして創られたかを検証する。
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49 人中、42人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
戦前という時代のイメージが変わった,
By terra_hose35 "terra_hose35" (東京都世田谷区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 「現人神」「国家神道」という幻想―近代日本を歪めた俗説を糺す。 (単行本)
明治時代以降のわが国の神道を語る場合、かならず使われる用語が「国家神道」であり、その中心にあるのが「現人神」である天皇であった、というのが、私の理解であったし、一般の理解であろう。しかし、それらの用語が生み出されくる背景を見ると、明治以降の日本の歴史に対してかなり偏った見方や限られた部分だけを見て、論理が展開されていることを本書は指摘している。たとえば戦前の神道に対する一つのイメージを作った村上重良氏の『国家神道』(岩波書店)に展開されている説にも、明治維新以来の宗教政策を丹念にしらべていけばいくつもの破綻があることを明らかにしている。 実際、「国家神道」といわれた思想を生み出したのは、かならずしも神道プロパーの人たちではないし、「現人神」という考え方を生み出したのが明治政府の人々ではないことは、この本を読んで初めて知ることができた。 さらに、本書の中で、明治大正時代に戦わされた政治と宗教のあり方についての議論が紹介されているが、現在のわれわれが思うより、あるいはむしろわれわれ以上に自由な議論がなされているのが新鮮な驚きである。 限られた紙面で、例証がじゅうぶんにできていないところもあるようだが、日本近代史に対する、戦後の固定観念を解く入り口としてはじゅうぶんな内容であろう。
65 人中、52人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
待望の書,
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レビュー対象商品: 「現人神」「国家神道」という幻想―近代日本を歪めた俗説を糺す。 (単行本)
いかなる国もそうであるように、近代日本の歩みも「宗教」と切り離しては考えられず、その正確な認識が不可欠であるにもかかわらず、この方面に関する的確な分析に、これまでお目にかかったことがなかった。相当の学識ある人でも、「国家神道」「現人神」については、それが昭和のある時期にねつ造された幻想であることとに寸分も疑いを抱かず、幻想を事実と思いこんだまま、通俗的な誤った議論を展開している。この憂うべき状況に、声を荒立てるのではなく、淡々と史料に語らしめ、俗説を糾す本書は、まことに待望の書である。
58 人中、45人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
自らの「宗教観」を問い直すきっかけに。,
By Hiromi (ロンドン、UK) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 「現人神」「国家神道」という幻想―近代日本を歪めた俗説を糺す。 (単行本)
私は戦争を知らない世代だが、「勝つ見込みの無い戦争」であった大東亜戦争を、「天皇陛下のため」「お国のため」に勇敢に戦って散った我々の父祖を、「狂信的天皇絶対主義で洗脳されて犬死にした」などという言説には本当に腹が立つ。といって、「『国家神道』というものを日本国政府が全国民に『強制した』時代があった」ということ自体に反論するすべもなく、直感的に「どこか間違っている、矛盾している」と思うだけで歯がゆい思いをしていたところであった。 新田氏は、明治初期の政府の宗教教育方針からGHQによる『神道指令』にいたるまでの道のりを丹念に見直し、『国家神道』という幻想を作り出し、それを政府が「強制」したという事実があったように見せかけたのは「誰」だったのか(あるいは「何」だったのか)等など、これまで「当たり前」と思っていたことを悉く覆して見せてくれた。 何度も膝を打ち、目から鱗がはがれて、胸にわだかまっていたモヤモヤがすっきりと消化された気分である。 ちなみに私の実家は浄土真宗であるとつい最近母が亡くなって初めて知ったのだが、人畜無害の「ご都合主義的仏教」と勝手に思っていた浄土真宗の恐るべき「野心」の事実を知って愕然とした。無知は時々罪でさえある。 日本人の「宗教感情」というものが、多くの人が「無宗教」と思ってしまうほどに土着的に身に染み付いていることを改めて感じた。「天皇」の存在そのものに対する国民の気持ちも、「強制されたから仕方なく持つ」類のものではないということを、本書が証明してくれたような気がする。
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