「龍馬伝」をテレビで見ていて思った。こういう英雄が大人気の国って珍しいのではないだろうか?
血なまぐさい戦いの中で活躍したのではなく、戦いを交渉によって避けさせようとした人物を僕たちは愛している。
この新書の帯にある写真を見て、あっ、この人は龍馬ではないかと思った。 明石康さん。福山雅治のようなイケメンではないが。
面白かった。現場での具体的な経験、実現できたことと実現できなかったこととが、リアリズムを離れることなく語られている。後の世への教訓も多い。
和平後のカンボジアで民主的な選挙を成功させたキーパーソンに明石康という秋田県人がいたのだ!ポル・ポト派による暗殺計画もあったという…。
旧ユーゴ紛争では、手強い民族主義者たちを説得し、やる気まんまんだったNATOによる武力行使を回避させてもいる。 国連軍を守るための限定空爆などは行なうが、武力行使には慎重だった。そんな「弱腰」に対して欧米では厳しい評価もされた。 しかし、現在のアフガニスタンやイラクの泥沼を考えれば、彼が信念を持ち守ろうとした立場から学ぶべきものが多いのではないか。この人の心にはに悪魔や鬼を作りたがるメディアとは逆のベクトルが働いていた。
誠実に相手の話を聞き、理解に努める。共感もしながら課題を浮き彫りにし、一緒になって考えていく。そうした粘り強い実践の積み重ねの具体例がいくつも登場する。
坂本龍馬の時代に日本という統一体のイメージが定まっていなかったのと同じように、現代において国連の基盤はまだ弱い。アメリカ幕府が大政を握っている。
幕末を舞台にした「JIN」というドラマが人気を博したが、明石さんこそまさに厚い仁を内に持つ人ではないかと思いました。
休戦状態の続く朝鮮半島問題を考える上でもいろんな示唆を与えてくれる本です。
↑書いて三カ月。政治家たちの安易な自称龍馬にうんざりです。