太平洋戦争末期の航空特攻作戦を、戦後生まれのジャーナリストが真摯な取材で跡づけていった2005年刊の書籍の文庫版です。
人は何によって生きるか。トルストイはかつてこう問いかけ、その答えを「信仰」に求めました。では、人は何によって死ねるか。有事の際、国のために死ねるか。
本書の紙背から繰り返し浮かび上がるのは、人は命令などでは死ねないという事実です。人は「理」では死ねない。人は「情」のためにのみ死ねる。仲間、家族、故郷への情愛のためにのみ、わが身を捧げることができる。その死を生かすことができる。
本書では、60余年前に自ら「死」を選ぶことで己れの「生」を最大限に生かした若き特攻隊員たちの思いが、彼らの妻や子、親、婚約者ら残された者たちの「戦後」を通して鮮やかに描き出されています。
併せて読むべき本書の続編で、海の特攻作戦に取材した『回天の群像』(角川学芸出版)の中で、著者はこう述べていました。
「特攻隊を考えるということは、『人間』を考えることにつながる」
「特攻隊を追跡することで、現代日本を見つめ直せるのではないか」
こうした問題意識は、著者が新聞記者として現代の日本社会を見つめる中で培われたもののようです。日本人はなぜ、ここまで劣化してしまったのか。その疑問と解決策を求めてたどりついた先が、60余年前の「特攻」だったとは、いったいどういうことなのでしょうか。
角川の文庫本は紙質のせいか軽く持ち運びによい上、自らも特攻隊となる運命だったことで知られる作家、神坂次郎氏の真情あふれる解説が付されています。