心理学は今どんな「渦中」にあるのか。
「現実から遊離しているのではないかと指摘される渦中」
「科学であるのかどうか疑われる渦中」
「精神医学とはどこが違うのかという渦中」
「精神鑑定はほんとうに有効なのかという渦中」
「似非も含めて心理学ブームという渦中」
「誰もかれもカウンセラーになりたがる不思議の渦中」
たちどころに様々な「渦中」が浮かぶが。本書タイトルの「渦中」
そういう意味ではない。
観客として心理学を扱うのではなく、少々くどくどしく言うと、こうだ。
「心理学の対象となる他者とともに心理学者として心理学の渦の中にいる「渦中」の人として心理学を捉え直そうという試みなのである」
往復書簡というかたちで綴られたこの書の著者は1947年生まれ、発達心理学者で、精神鑑定にも関わり、供述分析に詳しい浜田寿美男氏。
そして、1964年生まれ。社会心理学者として、ベトナムでフィールドワークを続ける伊藤哲司氏である。
17歳年上の浜田氏に伊東氏が聞く形となる。
両人の共通点は「現在日本では大学心理学の主流である、実験心理学に強烈な違和感を抱いたこと」である。
さらに「事件心理学に違和感を抱きつつも、精神分析には進まなかった」という共通点もある。
浜田氏は言います。
「従来の科学的心理学を応用していくのではなくもう一つの新る学を構想しないといけない。いまの心理学には不満があるが
これを捨てることができず踏ん張っている」
「心理学が学会や大学の”制度”として確立すると、その”制度”の認可を得なければ研究の業績を積むことも、
それを職につないでゆくこともできない。結果として、その”制度”の認可を受けられるような研究をやるという方向に傾いてしまう」
(これは、臨床心理士の国家資格化についての言及です)
つまりは冒頭に挙げた「渦中」についても話し合っているのである。
「渦中」の心理学を実践する2人の著者によって、現在のどろどろした心理学の問題点が見えてくる。