ほかのレビュアーの方々が、「サラサラ血液」「ドロドロ血液」にからんで,概ねよい評価をされているが,あえて検査技師の大先輩に厳しい評価をさせていただく。
凝固のカスケードについて、今日ではこのようにまとまったと,他書の図を引用されているが、このカスケードはほとんど1960年代のままだ。酵素と補酵素の関係も全く整理されておらず、今日では死語となっている「血液活性トロンボプラスチン」「組織活性トロンボプラスチン」が平気で使われている。「血液活性トロンボプラスチン」「組織活性トロンボプラスチン」はともに'''X因子・'''V因子・リン脂質・カルシウム複合体(プロトロンビナーゼ)のことなのだから,区別する必要はない。
また,「ケガなどによる異物接触」から「XI因子」に矢印を入れているが、こんな矢印は入れてはいけない。そもそも「ケガ」なら''組織因子から働くはずだ。それに著者自身「XII因子欠損症に出血傾向はない」としておきながら、カスケードにXII因子を入れているものを、漫然と引用いている。欧米では「生理的な凝固のカスケード」には、XII因子を入れないのが常識だ。amazonでもよく売れているEssential Haematologyの前の版でも、すでにXII因子はなかった。もちろんBloodなどの最先端の雑誌でも普通のことだ。
まだまだ多くの間違いがあるが、一番ひどいのはクイックの一段法で血友病を評価するような記述があることだ。クイックの一段法では、絶対に血友病は評価できない。絶対にっ!!著者よ、あなたは本当に検査技師か?
参考文献には21世紀になってからのものも多く載っているが、著者は本当に読んだのだろうか。本書の内容はほとんどすべてが20世紀のものだ。21世紀も9年目になった今日、このような本をあらためて出版する意義があるのか。「ドロドロ血液」だけなら、他に良著があるだろうに。
検査技師の後輩たちよ、君たちはこんな本で「勉強」してはならない。