本書で著者のキューバ物は5冊目、渡航も13回に及ぶ。
私もシリーズのレビューで「全ての真実でないのは確か」と書いたが、本書ではあえて狭くボロい住宅・食糧の不足と高価さ・非効率な官僚制度・200倍もの所得格差等マイナス面を特集して書いている。
これら苦難を乗り越えてこられたのは、人々の連帯であるが、それも失われつつあるとも。
これらはゲバラの求めた、人間の敵である資本主義社会の価値観を克服し、共同体のために尽くし、労働を喜びと感じる『新しい人間』の育成に失敗したからで、そのような理想的な人々だけの国など出来ようもないのだが、そうであっても政府は人と命を大切にし、人々は助け合い、銭や物は無いが時間と心の豊かさはある生活を送っている。
勿論悪い面ばかりではなく、硬直化した官僚主義を地域の声を吸い上げ、国の政治に反映することで打破し、資本主義的経済システムを徐々に取り入ての農業生産性向上、ドロップアウトした若者やシングルマザーも手に職をつけられるシステム、貧しくとも大学で学べる教育の機会均等、以前は迫害された同性愛者も芸術家も、新たに政府批判ブログを発信しているヨアニ=サンチェスも、逮捕・国外追放されずに国内で暮らせるようになった点も書かれており、より生のキューバに近くなった。
それでも売春、工場から盗んだ闇葉巻売り、ひったくり等の犯罪者はいるし、官僚等高級職の黒人の割合は少なく、亡命する者もいるが、殊更にマイナス面をクローズアップするならば、他国のそれはもっと酷いのではないか?
キューバを見習う面は資本主義諸国も多く、命が軽視され続ける日本は特に、これからの少子化により経済2流国化に向けて、取り入れるべき点は多い。
住みよい国は、誰かがくれる物ではなく、(例え無血でも)闘いで勝ち取り作り上げていくしかないのだ。