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「江戸前」の魚はなぜ美味しいのか (祥伝社新書199)
 
 

「江戸前」の魚はなぜ美味しいのか (祥伝社新書199) [新書]

藤井 克彦
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

東京湾は死んではいない。
広さが同程度の鹿児島湾と比べると、年間漁獲量は3倍の2万トン。江戸前の海で獲れた新鮮な魚はほぼ首都圏で食べられている。
湾に注ぐ川の流域人口は2900万人。東京湾の魚は彼らの貴重なタンパク源だ。
『つり情報』編集長だった著者は、東京湾について長年調査し、「江戸前」といわれるものの実態をきわめるべく、食と文化について調べてきた。なぜ江戸前の魚は美味しいのか。
江戸前とは何なのか。
東京湾を知れば、江戸前がわかり、江戸前がわかれば江戸っ子と東京人がわかります。
読んで楽しい「江戸前」百科。

著者について

東京・深川に生まれ、幼い頃から釣りに夢中になり、不破哲三の秘書(選挙担当)を経て、『つり情報』『磯・投げ・堤防』『つり人』などの編集長になる。釣りのビデオ製作も数多く手がけ、釣り人としても有名。水産庁の「東京湾再生検討委員会」委員。著者に『釣りに行こう』(岩波ジュニア新書)『漁師のマル秘料理』(日東書院)『江戸前の素顔』(つり人社)などがある。

登録情報

  • 新書: 256ページ
  • 出版社: 祥伝社 (2010/4/1)
  • ISBN-10: 4396111991
  • ISBN-13: 978-4396111991
  • 発売日: 2010/4/1
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.8 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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By Lehman Packer トップ1000レビュアー
形式:新書
 「江戸前の魚がうまいなんて、冷蔵庫の無かったころの話で、鮮度以外に江戸前の魚が特別な理由なんか無いだろう。」と、評者は大ざっぱに考えていたのだが、少し間違えていたようである。

 西は多摩川から東は江戸川に挟まれた東京都内湾の入り江が、昔からのの江戸前の定義である。日本の数ある入り江の中でも、この入り江ほど多くの川が流れ込むところは他に無く、山々の恵みが豊富な植物プランクトンとなり江戸前には流れ込んでいるそうだ。その植物プランクトンを食べるのがアミなどの動物プランクトンで、それを主食とするのが鰺やハゼなどの小魚で、さらに小魚を食べるスズキなどが浅瀬まで回遊してくる。
 この汽水域の豊かさは、日本国内でも群を抜いたものであり、かつて東京湾の漁獲高は単位面積当たりで日本一であったそうだ。知らんかった。

 また、栄養豊富な江戸前では、アジやイワシもふっくらと育ち、外洋に面した相模湾では脂がのらないアナゴも、東京湾の夏場の天然ものは養殖ウナギと変わらぬほどに脂質を持つという。
 ビルに埋まる東京の街からは想像もできぬが、江戸前の魚の味を別格にするのは恵まれた自然環境だったのだ。

 東京都内湾は昭和37年に東京都と漁業組合の合意で、補償金と引き替えに漁業権が放棄されている。その後、江戸前の海は急速に埋め立てが進み今にいたるが、東京湾のスズキの漁獲量が日本一なことからも、依然として豊かな海であると考えられている。
 海洋汚染も改善した今、せめて垂直に造られた護岸に、傾斜をつけるなり浅瀬を造るなりすれば、江戸前の海も捨てたものじゃない、と船宿の親方は語っている。

 藤井氏の文章は饒舌である。本書は話好きのおじさんの喋り言葉を、そのまま文章にしたようなものだ。理路整然という分けにはいかぬが、江戸前料理の起源、伝統的な漁の方法、現代までの江戸前の変遷など、これでもかと蘊蓄が詰め込まれており、読んでて楽しい。
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By 放蕩息子 VINE™ メンバー
形式:新書
実は東京湾の“豊かさ”を証明する自然科学的な解説や定量データが欲しくて本書を買ったのだったが、実際の内容は人文科学的なアプローチが中心だった。その意味では「期待外れ」だったのだが、その代わり、「江戸前」の海の幸に関する「江戸前の(食)文化」のありさまをたっぷりと堪能させてもらって、結果としては「期待以上」の読書となった。
東京湾の生物相の豊かさは客観的な事実であり、そのメカニズムの解説であれば、本書よりももっと適した本もあるのだろう。しかしその海が生んだ「江戸前」の(食)文化の豊かさを、かくも深い愛情を込めて語ることが出来るのは、著者の他にはいないのではないか。

しかしその文化も今や、魚以上に絶滅危惧である。かつての姿を幽かな記憶にとどめる著者の世代が鬼籍に入ってしまえば、この「江戸前の(食)文化」は魚よりも早く、この地球上から消えうせて、二度と甦らないかもしれない。それが沖縄や北海道や、あるいは白神山地のような場所でなくても、自然環境を守ることは文化を守ることに他ならないのだと、本書を読んで改めて考えた。世界一豊かでバラエティに富んだ食料と、そこから産み出された高度に洗練された文化とを育む海を生き埋めにして、外国生まれの遊園地と日本中どこでも代わり映えのしないコンクリート団地を造成してしまう愚挙は、二度と繰り返してはならない。

なお余談だが個人的には、「江戸っ子」という言葉に対する著者のアンビバレンツが、何とも興味深かった。実は私の知人にも生粋の浅草っ子がいるのだが、「本所・深川は、川向こう。」という感覚は、私のような地方出身者には中々理解できない。ただその深川生まれで「川向こう者」と言われた本書の著者だからこそ、「江戸前」に対するこだわりもまた、一層深いのではないか。そんな気もする。
「下衆の勘ぐり。」と叱られるだろうか(苦笑)。
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