【内容紹介】
二〇〇六年旧正月に発表された『中国青年報』付属週刊『氷点』の停刊命令のニュースは全世界を駆けめぐった。文化大革命の時と同じく、共産党権力による学術言論への弾圧攻撃が始まるのではないか、という危惧を感じさせたからだ。掲載紙の『氷点』は、中国ジャーナリズムの良心として高い評価の紙面だったから、一層注目を集め、内外から言論弾圧への抗議の波が起きた。
原因は『氷点』が中山大学教授・袁偉時の「現代化と歴史教科書」という論説を掲載したことだった。それは自由主義の立場から、現歴史教科書は文革時と同じ「狼の乳」を飲ませている、第二次アヘン戦争と義和団事件の「左毒」記述は間違いで、皇帝、官僚、民衆がみな「愚昧」で極端な民族主義にとらわれて無謀な抵抗や破壊を行なったから、円明園焼失や国辱を生んだのだと批判し、民族主義・階級闘争絶対化の思想は現代化に合致しないのだと主張した。 掲載後、ネット上でその非抵抗主義に対する批判の嵐が起き、再刊後の『氷点』に張海鵬のマルクス主義派からの批判論文が掲載され、第二次アヘン戦争の不可避性と英仏の侵略者の本質を強調し、欠点ある義和団の原始的反帝国主義は認められるべきだと主張した。
それらに袁が歴史学的に反論し、論争になった。袁の教科書批判は、国家(共産党)意思を体現した歴史教科書の批判を意味し、とりわけ91年の江沢民指示以来推進されてきた近現代史教育強化の愛国主義教育に対する批判という位置を占めたから、党の逆鱗に触れたのだ。
両者の論争は中国近現代史を貫く民族主義と近代主義の二思想潮流の対立の重演で、それぞれ長所と欠点を持っているが、多数を巻き込んだこの論争の論争点を洗い出し、内容を歴史学的に分析することを通じて、今の中国の言論自由と学術自由、思想傾向の赤裸々な姿が浮かび上がった。また、論争に論争評価史的な光を当てることによって浮かび上がる現代中国の思想文化状況から、この論争の歴史的位置が明らかにされる。
1949年、福島県生まれ、一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。1985年から東京外国語大学外国語学部に勤務、95年教授、海外事情研究所所長を歴任。社会学博士。
専門は中国近代史、歴史学、近代東アジア国際関係史。
主著『義和団の起源とその運動――中国民衆ナショナリズムの誕生』(研文出版、1999)。中国語訳は『義和団的起源及其運動――中国民衆Nationalism的誕生』(社会科学出版社、2007)として出版予定。他に、『続中国民衆反乱の世界』(共著、汲古書院)、『宗教の比較文明学』(共著、春秋社)、『中国の家・村・神々』(共著、東方書店)など、翻訳書に、ピ-ター・バーク『歴史学と社会理論』(慶応義塾大学出版会、2006)、陳白塵『黒旗軍――十九世紀中国の農民戦争』(研文出版、1987)、『世界の歴史教科書=中国2』(共訳、ほるぷ出版、1981)などがある。
登録情報 |
この商品にタグをつける(詳細)タグは、商品との関連性が非常に強いキーワードまたはラベルのようなものです。
タグにより、すべてのお客様がお気に入りの商品の整理と確認を行うことができます。 ※タグは初期設定で公開になっています。詳しくはこちら |
|