私は、最近の子どもにとって、「死」は身近なものなのかもしれないと思っていた。それは、残念ながら「悪い意味で」である。私はスクールカウンセラーという仕事柄、思春期の子どもたちの話を聞くことが多いのだが、彼らはごく普通に「死ね!」と言ったり「死にたい」と言う。実際にリストカットなど自分を傷つけたり、薬を大量に飲んだりする。先日、ある社会学の教授の講演を聴いたが、自分に価値を見いだせず、生きることに苦痛を感じているのは、被虐待児と呼ばれる子どもだけでなく、一般の子ども達の中にも確実に増えているということであった。
そんな、絶望的とも思える状況の中で、本書に取り上げられている中学校の教師は、驚くほど「まっとうな」やり方で子ども達に「死」を教えている。私は同じ子どもに関わる者として、その「まっとうさ」に嫉妬すら覚えた。「死」の授業を通して、子ども達は自分の存在の大切さ、生きていることの素晴らしさを実感として学んでいく。リストカットを繰り返していた子どもが、「死」の授業を通して、リストカットをやめ、その後も元気に暮らしているというエピソードは、彼の授業の「まっとうさ」が本物であり、また子どもの健康的な部分を信じることの大切さを物語っているように思える。私たち大人が、子どもに対して何を示していけるのか、本書からは多くのヒントがもらえるはずである。