正直言って、文体や構成は「論文」であって、すらすら読む大衆書
ではない。しかし、分析されていることは、骨太で、越し方行く末の
労働事情をみごとに分析した労作です。
おおまかには、前半は、日本人の雇用創生に関する思想の特徴
(マーケット市場原理主義、雇用は景気連動の派生主義など)をベースに、
正社員、非正社員、雇用者、自営業者、IC(インディペンデント・コントラクタ)
など、益々曖昧になる仕事の仕方、雇用形態をさまざまな角度から分析。
後半は、そんな嵐が吹き荒れる雇用の大激動のさなか、今は無風な「超終身
雇用世界」と、マスコミと雇用ファシズムによる圧力による崩壊の予兆を
実際の実例、実名、事件を引き合いにして実証式に考察していき、外野から
見ていると、相当に面白い。ちなみに、超終身雇用世界とは、医師・弁護士
など資格プロ、公務員、規制産業(電力など)の会社員、超大企業にぶらさが
っている中年社員などなどとしている。
結論付けた結末もないし、著者自身は民間で雇用された経験がない、と
正直に吐露しているが、しかし、本書で分析しているファクトやあいまいに
なる雇用、さらにグローバリゼーションと国際競争にさらされる先進国の
ホワイトカラーワークなどは、的を得ていて、この辺で、金融危機と未曾有の
不況で大混乱に陥っている雇用、労働をいったん整理する、という意味で
大いに価値ある一冊といえます。
本書を読むと、失業時のセーフティネットがいかに重要でありがたい制度
かがよくわかり、その制度的充実を切望したくなります。