本書は国立公文書館で新史料が公開されたことを契機として、日経新聞に連載された記事を単行本化したもの。
内容のうち、半分が史料原文とその解説、半分が半藤・保阪・井上三氏の対談という形式になっている。
公開された史料は最終的には公的な形で集められたものだが、そもそもは豊田隈雄ら復員局職員の「貴重な史料を散逸させてはならない」という篤志から動きだしたものだという。後世の我々は彼らに感謝しなくてはならないだろう。
さて、内容であるが、特に原文を読みたいという人でなければ、対談の方のみを読んでいけば良いと思う。対談は専門家同士のものなので、基本的知識はあるものとして進んでいく。そのため、本書は東京裁判初心者には薦められない。初めに読む本としては、日暮吉延『東京裁判』(講談社現代新書)がイチオシである。
東京裁判研究をフォローしている人にとってもあまり新史料からの目新しい話はないのが肩透かしだ。とは言え、東京裁判研究の現状を知るには良いかもしれない。
例えば、公開された史料は文書件数6000件、書籍200冊分におよび、「その内容をすべて読んで頭に入っている人はいない」こと、一線で活躍している保阪氏が国立公文書館のウェブサイトから原史料を検索、閲読できることを知らないこと・・・など。なかなか赤裸々である。
言いかえれば、まだまだ未来の歴史研究者にもチャンスがあるということなのだ。
日暮氏や粟屋憲太郎氏が本書でも新進の学者として言及されているが、史学科で学ぶ学生など、歴史学者の卵たちにもぜひ頑張ってほしいと思う。