私は保守的思想を好む人間である。一方で、時には反権力的な本も読まなければ考えが偏るとも思っている。そのような観点から、この本を読んだ。
内容は、大きく言うと、「村山談話」の語られた背景の部分と、村山富一氏の自叙伝との二つに分かれている。読んでよかったと思っているし、まず第一におもしろかった。
先に分かりやすい方の村山富一氏の自叙伝について語ると、真にけれんみの無い同氏の人柄が伝わってくるようで、こういう人は政治家として真に適切なのだな、ということを感じた。何よりも日本の働く人達のためになろうという姿勢がよい。ダイナミックなことに挑戦する政治家がいる一方で、こういう地味な活動を続けてきた政治家にも敬意を払いたい。村山氏が首相をやめた後に大分から東京に飛行機で出かけるときに、後ろの席に座っていたら、スチュワーデスが、「一国の首相までされた方が、普通の席に座っていらっしゃるなんて、尊敬します。」と言ったそうだ。むべなるかな、である。
さて、今度は読む人によって意見が異なる部分への評である。
この本は佐高信氏との対話を通じて、村山談話、を話し合うという形式を取っている。その中で、先に世間を騒がせた、田母神元航空幕僚長の論文についてや、小泉元首相及び阿部晋三元首相の政治姿勢についても語られている。その中で気になったのは、小泉氏が山村談話を継承していながら靖国神社に参拝するのは矛盾している、と批判していることである。政教分離については確かに一考あるところではあろうが、極東軍事裁判で判決を受けた方々をいつまでもA級戦犯と称していかにも日本国民がそれを裁決したかのように言うのは、既に時代遅れではないか、と思ったものである。
そうではあるが、この本によって一国の首相を務めた山村氏とはどのような方であったのかを知ることができたのはよかったと思う。