とても読みやすい平易な文で書かれており、概ね首肯できる内容です。
しかし、主に以下の4点の理由で年金の不安がこれで全て解決するとは言えません。
1.物価上昇と賃金の低下について
144頁に「物価と共に『給料』も増えていく」とありますが、2008年度の物価上昇は前年比1.4%(統計局のH21.1.30公表のCPIより)。賃金は不況を理由に賃下げに向かっています。「マクロ経済スライド」により給付額が下がる可能性があるだけでなく、「仕送り方式」である年金の財源が減ることになります。前提条件が崩れる場合があるということです。
2.年金積立金の運用方法について
その不足分の為に年金積立金があるのですが、運用は株安・円高の影響を極めて受けやすい(H20年度 第3四半期で8.4兆円の赤字【マイナス9.1%の利回り】)。パッシブ運用は長期運用に有利ではあるが、厚生労働省の「向こう百年平均利回り4.1%」は難しいと思います。元本保証が無いことも良く考えるべきでしょう。
3.二分の一の国庫負担分の財源問題について
179頁にある「国民年金における国の負担が二分の一」については、平成22年度までの2年間は財政投融資特別会計から賄うことになっています。しかし、それ以降の財源はまだ決まっていません。麻生総理は消費税増税を示唆しましたが、与党の反発で実施されるかは不透明です。毎年2.3兆円を消費税で負担できるかどうか今の段階では(政権交代の可能性もあり)全く分かりません。
4.実際の給付金額が書いてない
年金制度が破綻しないことが分かっても、実際いくらの年金が貰えるかせめて現行のモデル年金額くらいは載せておくべきだと思います。
国民年金のみの場合、6.7万円(単身者)、厚生年金の場合は17.1万円(単身者かつ平均月額報酬が約36万円、勤続40年)です。
大卒22歳で就職できたとしても勤続は38年、生涯の平均年収が400万円超というのは該当する人間は少ないのでは。手厚いと言われる「厚生年金」は報酬比例ですので、これより給料が少なければ年金も減ります。相応の貯蓄がないと、年金制度は破綻しなくても年金生活が破綻する可能性があります。
その他にも生活保護費の増大や膨大な国債残高など、年金制度に影響を与えかねない要素はいくつもあります。
それでも年金を払うべきことには間違いありません。消費税の引き上げの提案も概ね妥当です。
ただ、将来の不安が解決されるかどうか別問題でしょう。