加賀屋のように優良なサービスで著名な組織だけではなく、全国的には無名な企業の事例も多く新鮮である。著者の視点は明快で、属人的な精神論に陥りがちなサービスを、科学的・工学的なアプローチによって、効率的、継続的に顧客のニーズに応えることを可能にした組織の力を検証することにある。業種を問わず、「サービス」を考える人にはいくつもの気づきがあるだろう。
ただ、読後2つの課題を感じた。
1.工学的アプローチにより無駄な(顧客にとって価値を生まない)部分の合理化を進め、本当に顧客が望むサービスの強化に経営リソースを割く、そうして顧客満足を「効率的に」実現するという方法論は納得できる。たしかに非効率な顧客満足至上主義は、経営を苦しめる。だが、その企業の評価として紹介する数値が、売上げや店舗数、顧客数などといった「量」の指標では、著者の論点と合致していない。顧客満足と効率の両立を立証するのであれば、評価するべき指標も「効率」の結果である「生産性」や「利益」でなければ一貫性がない。結果として紹介されている指標が効率の指標となり得ていないのが残念。
2.タイトルの「最強」について、日本のサービス産業が本当に生き残るためには、グローバルな競争に打ち勝つ、サービスの輸出産業化が不可欠なのではないか。いま日本から世界進出して大きな成功を収めているサービス業はほとんどない。本書はあくまで国内市場での勝利のみにフォーカスされているが、日本という縮む市場での勝利は、生き残りの必要条件ではあるが、この時代における「最強」だとは思えない。実際にグローバルな競争を視野に入れられるのか、そしてその時、日本のサービス業が世界的にみると「良いけれどオーバースペックである」という過剰品質問題をどう乗り越えるのか、それを示してこそ、この時代の「最強」を語ることになるのではないのだろうか。