防衛官僚のトップとして普天間問題に関わってきた著者が長年にわたる交渉の舞台裏や経緯を記した。
役所のトップを勤めた人が在任中の政策について記録にとどめ公表する姿勢は、内容や人物像を別にしても
高く評価しなければならないだろう。
本書では、沖縄の基地問題において政治の意志があまりに不在であり迷走ばかりし、あるのは利権だけというのが良く分かる
(著者は「利権」という言葉を使っていないが、政治家や地元・沖縄の言う事がころころ変わる裏にはやはり利権があるからだろう)。
それゆえに優秀な官僚だった(と思われる)著者は普天間問題に関してぶれずに、一直線に交渉を進めて行く。
この問題でぶれないのは、もう一人の「ぶれない男」小泉純一郎だけである。
そこら辺の舞台裏や人物像が面白い。沖縄の基地問題を知るにはもちろんだが、
自民党時代の霞ヶ関・永田町の政策決定過程(とそのいい加減さ)を知る上でも好著であると思う。
それにしても、この人、長い間にいろいろなことをやり過ぎたとも思う。優秀さがそれを可能にしたのだろうが、
自らの信念を貫き、それを実行していけば敵は増えるばかりであろう。役所のトップまで上り詰め「防衛省の天皇」とまで
呼ばれたらしいが、そういう人物が結局「刺された」のも本書を読むと良く分かる。
サラリーマンなど組織に属する人間は、その意味でも勉強になるかも。
白眉は巻末にある著者の防衛論を記した「将来に向けての日本の防衛」との一文。日本の防衛論の基礎、原理原則を
考える上で格好の教科書である。