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「日本文化論」の変容―戦後日本の文化とアイデンティティー (中公文庫)
 
 

「日本文化論」の変容―戦後日本の文化とアイデンティティー (中公文庫) [文庫]

青木 保
5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

『菊と刀』から「日本叩き、日本封じ込め」論まで、日本「独自性」神話をも創り出した。その議論の移り変りを、戦後の流れのなかで捉え直した力作。吉野作造賞受賞のロングセラー。

登録情報

  • 文庫: 212ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (1999/4/18)
  • ISBN-10: 4122033993
  • ISBN-13: 978-4122033993
  • 発売日: 1999/4/18
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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 日本人はそのアイデンティティーの拠り所を書物で確認したいという思いが強いのか「日本人論」というジャンルが確立するほど、膨大な日本文化論が書かれ、多くの読者に読まれ続けてきた。著者は時期的には第二次大戦後に限って、優に2000点をこえるという多くの日本文化論のなかから内容の優れたものを選び出し、その概要を紹介するとともに執筆時点の時代的背景や社会に与えた影響等を分析していく。その結果、一見すると日本文化についての客観的解説に見えるこれらの書物が、執筆時点における特有の社会状況の下で、日本人が欧米という外部の眼を意識しつつ自己を主観的に眺めた自画像だということ、さらに、戦後日本の社会状況の変化にともなって、日本文化論も大きな変容を経ているということを明らかにしていく。本書は、数多く存在する日本文化論についての、非常にバランスの取れた見取り図だといえよう。
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
この著書は日本文化論の変容を時代の政治、経済、社会、文化的文脈において考察したものである。

目次は以下の通り

1.戦後日本と「日本文化論」の変容
2.『菊と刀』の性格
3.「否定的特殊性の認識」(1945〜54)
4.「歴史的相対性の認識」(1955〜63)
5.「肯定的特殊性の認識」前期(1964〜76)、後期(1977〜83)
6.「特殊から普遍へ」(1984〜)
7.「国際化」の中の「日本文化論」

まずルース・ベネディクトの『菊と刀』が取り上げられる。敵国国民の研究にも拘らず西洋文化を逆照射してしまうかのような徹底した文化相対主義的なアプローチを特徴とした『日本文化論』は、「集団主義」、「恥の文化」、「階層的社会」などのその後の多くの「日本文化論」の参照系となり、支配的な影響を与えた。

第一期「否定的特殊性の認識」の時代において坂口安吾の「堕落論」、丸山真男、川島武宜などの「近代化論」が取り上げられる。

敗戦による戦中の世界観の徹底的破壊のなか当然ながら「日本文化論」は否定的である。日本文化の形容においては「前近代性」「封建遺制」「非合理性」「反民主主義的」などの否定的言葉がずらりと並ぶ。

第二期「歴史的相対性の認識」の時代においては加藤周一の「雑種文化論」と梅棹忠夫の「生態史観」が取り上げられる。「もはや戦後ではない」という言葉に象徴されるように、日本社会は戦後の混乱を乗り越え大きな転機を迎えていた。日本文化論も否定一色から相対的な肯定へとかわる。

第三期「肯定的特殊性の認識」の時代においては中根千枝の「タテ社会論」、作田啓一の「恥の文化論」、土居健郎の「甘え論」、浜口恵俊の「イエ社会論」、エズラ・ヴォーゲルの「ジャパンアズナンバーワン」、さらには三島由紀夫の「文化防衛論」などが取り上げられる。

高度経済成長期の真っ只中であり、67年にはGNPで世界第2位の経済大国と変貌した日本において「日本文化論」は一つの黄金期を迎え、「集団主義」や、「恥の文化」が打って変わって肯定的に語られるようになる。

日本の「特殊性」が、西洋的個人主義の生み出す過剰な社会的・個人的な競争・摩擦克服のための積極的な意味を持ち始めるのである。また三島由紀夫の日本伝統文化の復古主義的絶対化などに見られるように、多分な自己陶酔に浸りつつも、急激な変化を遂げる社会の中で日本の伝統性のロマン主義的な自己確認を強いられていることがわかる。

第四期「特殊から普遍へ」の時代においては、ハルミ・ベフの「イデオロギーとしての日本文化論」、チャルマーズ・ジョンソンの「通産省研究」などの外国人による批判的日本文化論、尾高邦雄の、山崎正和の「自己批判」が取り上げられる。

この時代においては、国際化の急速な深化のなかで日本の特殊性が再び否定的に語られてくる。「集団主義」、「日本的経営」の優秀性は、「不誠実」「人種差別」「女性差別」「交渉下手」などと痛烈に批判される。日本人論者も70年代の自己陶酔から一転目を覚ましたように、自らを批判的に見つめるようになった。

「日本人文化論」は日本出版業界において常に「売れる」ジャンルとして確立されているといえるが、時代時代により様々な相貌を見せてきた。

欲を言えば、『菊と刀』も大きく影響を受けているであろう『武士道』、『茶の本』、『代表的日本人』などの戦前の「日本文化論」の「古典」への考察が無いのが物足りないと言える。それらが生まれた時代背景を考察することにより、国民国家というシステムに不可分に結びついた近代的イデオロギー装置としての「国民文化論」・「日本文化論」の在り方が浮かび上がってくるだろう。

また90年代中頃からの保守運動も時代的制約から当然視野には入っておらず、我々読者はこの点に関する考察が必要である。

ヒト・カネ・モノ・情報のトランスナショナルな移動、また史的システムとしての資本主義の世界的発展の過程的現象としてのグローバリゼーションが「国民国家」という枠組みを不断に蝕んでいる。そしてこの動きに抗する反システム運動がナショナリズムの爆発となって発現している。

社会的危機感の下において「アイデンティティ」への空虚な渇望が生まれ易い。現にそれらの「愛国的」的保守運動が如何に多くの「日本文化論」を吐き出していることか。この動きにどう対応するのかは我々全てに関わる極めて「グローバル」な問題である。
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By crites
 戦後日本社会(敗戦から90年代まで)の流れを、日本文化論の変遷によって辿る試み。内容の詳細は他のレヴューを参照して頂きたい。

 感想を一言で言うと、つまらなかった。敗戦後は否定的な日本文化論、高度成長期になると肯定的な日本文化論、日本が経済大国になると海外から否定的な日本文化論が現れる。これでは当たり前すぎる。日本社会の変遷を前提に置いて、それに符合する本を選ぶという形を取った結果だろうが、こんな当たり前の結果ならば、本を書く必要はない。(もっといろいろ細かな議論がないわけではないが。)著者は「日本文化論とは何か」を探ろうとしているのではなく、「戦後日本社会と日本文化論の対応」を探っているだけだが、このことが議論の限界になってしまったように思う。

 最大の欠落が、日本語論を全く取り上げてないことである。これは著者の専門分野や、『菊と刀』の「集団主義」と「恥の文化」論を議論の柱にしているせいだろうが、日本語の特徴である待遇表現の豊かさは、集団の中での自己の位置づけと、そうして位置づけられた自己の内面を形成するものという意味で、この二つの柱を繋ぐ鍵になるものである。こういったことを取り上げなかったため、議論が深まらなかったのであろう。

 最後に。他のレヴューの中に、明らかに本書を読まずに批判しているものがあるので、一言付け加えたい。本書で取り上げられた数多くの日本文化論の中で、ある意味で著者が最も高く評価しているのは『菊と刀』である。ベネディクトは決して西洋を基準にして一方的に日本を叩くということをしておらず、「文化相対主義」の立場を貫いたというのが彼女に対する著者の評価であり、この点ではそれ以降の日本文化論が『菊と刀』を全く越えられていないとする。

 否定的なレヴューになってしまったが、この『菊と刀』評価などは一読に値するものである。
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