日本人はそのアイデンティティーの拠り所を書物で確認したいという思いが強いのか「日本人論」というジャンルが確立するほど、膨大な日本文化論が書かれ、多くの読者に読まれ続けてきた。著者は時期的には第二次大戦後に限って、優に2000点をこえるという多くの日本文化論のなかから内容の優れたものを選び出し、その概要を紹介するとともに執筆時点の時代的背景や社会に与えた影響等を分析していく。その結果、一見すると日本文化についての客観的解説に見えるこれらの書物が、執筆時点における特有の社会状況の下で、日本人が欧米という外部の眼を意識しつつ自己を主観的に眺めた自画像だということ、さらに、戦後日本の社会状況の変化にともなって、日本文化論も大きな変容を経ているということを明らかにしていく。本書は、数多く存在する日本文化論についての、非常にバランスの取れた見取り図だといえよう。