本書は2002年のNHK教育テレビ「人間講座」で放映された同名の番組のテキストがもととなって生まれた本である。放映当時に興味深くこの番組を視聴した自分としては、このよくできたテキストが、放送終了以降、人の目に触れることなく埋もれてしまうことを非常に惜しく思っていただけに、今回こうやってあらためて改訂・増補されて発売となったことに快哉を叫びたい。
『武士道』『風土』『菊と刀』『「甘え」の構造』『「世間」とは何か』などなど、明治以降、数多の日本人論が生まれ、そして消費されていった。その著者ごとのさまざまな視点から「日本」「日本文化」あるいは「日本人」といったものが語られ続けた ― こうした「日本人論」が語られ続けた歴史的状況に対し、文化人類学者である著者は、「では、なぜ「日本人論」というものは語られ続け、生産され続けたのか?」を問う。そこで浮かび上がってくるのは、近代日本という否応なく外国という他者の目に晒されることとなった状況の中で、絶えず「自分とは何者なのか?」との不安にさらされることとなった日本人のアイデンティティの動揺する姿である。この本はこれまで書かれてきた日本人論を通して日本人を語ろうとする、いわば「メタ「日本人論」論」とでも言うべきものだ。
明治以降21世紀の現代に至るまでのおもな日本人論(あの「プロジェクトX」まで!)を概観しつつも、単なる概説書にはとどまらず、著者独自の観点もあちこちに入っており、読みごたえがある。とは言っても、内容は決して晦渋・難解なものではなく、一般読者向けに平明に書かれている。学生・社会人に対してのみならず、大学受験を控えた受験生にもぜひ一読を勧めたい(これを読んでおくと、現代文・小論文の課題文理解でだいぶ助かるだろう)。
少なくとも、この本を読んだ後では「日本人とは…」と安易な言葉は口に出せなくなるだろう。