これまで禅問答のような監督語録だけが一人歩きして、地味キャラの多い代表チームの戦い方に対しては正面切った批評を下してこなかった。
本書は、そんな代表チームについての「正面切った」批評である。
そして、代表チームが出した「結果」はご存知の通り、アジア4位、であり、それに対する評価はかなり二分化したといってよい。
「これではダメだ」派と、「これが第一歩だ。このままで良い」派。
本書の立場は前者に属する。
ただし、前者の多くがまず「批判ありき」から出発した非論理的、もしくは近視眼的な根拠の脆弱なものであるのに対し、本書のスタンスはオシムの打ち出している「日本サッカーの日本化」のコンセプトを肯定し、その進展を認めたうえで、たどり着いた現代表の姿に幻滅し、絶望しているところが、特異である。
「日本人らしいサッカー」。古いサッカーファンなら誰もが一度は口にしたことのあるこのフレーズが、今、現実もののとなりつつある。そして現実の「日本人らしいサッカー」は、こじんまりしているばかりで魅力的とは言いがたいものだった。
オシムが提唱し、推し進めてきたサッカーは、オシムがイメージしている「日本化されたサッカー」は、本当にコレだったのか?
僕も、TVを見ながらそんな苛立ちを強く感じたし、同様の思いを持った方も少なくないだろう。
著者も、その視点から本書を書いているといって良い。
その苛立ちを切り払おうと、著者は試合を分析し、論理を組み立てようと苦闘するが、快刀乱麻とはいっていない。
論理を組み立てるためのマテリアルは座りが悪く、苛立ちは残される。
その意味では爽快な読後感といったものは残らない。
が、この時期にこうした批評が出されたことは評価されるべきであるし、キチンと目を通しておかねばならぬクオリティを持った一冊であることは間違いなかろう。