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レビュー対象商品: 「撃ちてし止まむ」―太平洋戦争と広告の技術者たち (講談社選書メチエ) (単行本)
ナチスにはゲッペルス率いる宣伝省があった。アメリカはハリウッドを動員して戦意高揚をはかった。では、戦前の我が国は?本書は戦時中に国策プロパガンダ(=宣伝)を請け負ったデザイナー・コピーライターを中心とした技術者(あるいはクリエイター)の企画・制作者集団(=プロダクション)、報道技術研究会とそれにかかわった広告人達をえがいている。 戦前、個々のクリエイターが広告主から個別に請けていた宣伝の仕事は、戦中に報道技術研究会というプロダクションによって組織化されたという。しかしその担い手たるクリエイターは、それぞれのジャンルにおけるモダニズムの旗手であった。その彼らが積極的に国策プロパガンダに従事し、さらにはまさにナチス・ドイツの宣伝省さながらの、すなわちプロパガンダの「技術者が国家の中枢と直結するという構想」を抱いていた、と著者は述べる。 戦後、戦中に蓄積された宣伝の技術は、そのまま広告、広報に転用された。私が本書から受けたイメージは、戦中の国家が企業に、報道技術研究会というプロダクションが広告代理店に入れ替わっただけ、という姿。そして、広告技術者=クリエイターは全く戦中の責任を顧みることがなかった、という。つまり彼らにはモラルが欠けていた。 著者は、報道技術研究会に携わったクリエイターを指弾することが本書の目的ではないという。確かに本書はニュートラルで事の理非を問うことなく、事実を積み重ねる。(それが逆に、現在の宣伝・広告と世論形成に疑問を持つ私のような輩に、あまりのアンモラルというか教養に欠けた姿に映って批判的な感想を抱かせるのだが……) いずれにせよ、本書は他に類書のあまりない、我が国広告界とプロパガンダという見過ごすことのできないテーマを取り上げている。著者にはこのテーマで他の著作がないようであるし、これは貴重な一冊である。
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