筆者は長年防衛省・自衛隊を担当している東京新聞の記者だけあって、様々な情報源を有しているのだろう、聞いた事がないエピソードが本書の随所に散りばめられており、面白い。イラクやアデン湾といった自衛隊派遣の現場への取材も行っており、現場の生の声を伝えている意義は小さくない。そして、海外派遣が常態化した結果、文民統制がないがしろにされているのではないかという筆者の問題意識も全うだと思われる。
それなのに、自衛隊は問題だ、自衛隊を徹底的に批判しようというマインドセットが筆者の深層心理に出来上がっているようで、せっかく筆者があつめた貴重な情報も、こうしたバイアスの下で料理されてしまっているので、結果として、よくある自衛隊批判本の類になってしまった。情報と情報をどのようにつなぎ合わせるのかというのが物書きの腕の見せ所であり、ここには細心の注意が求められるが、筆者は、前述のマインドセットに従って強引に情報を情報をつなげ合わせてしまっており、論理の飛躍としか思えないところが少なくなかった。個別の情報は面白いだけに、残念である。