「従軍慰安婦」の問題と言うと様々な立場の人が各々の主張を繰り返すので、問題が錯綜している感がある。本書は元慰安婦の方の救済のための「アジア女性基金」の理事の任にあった著者が、その現実を語ったもの。問題が整理されると共に、何が元慰安婦の方の救済を妨げているかを教えてくれる。
この問題は大きく分けて、人道問題と外交・思想問題の二つに分けられるであろう。著者は勿論、前者の「どうやって元慰安婦の方を救うか」という点で骨身を削って来た。だが、そこには後者の壁があると言う。最近、米アメリカ下院議院で「日本政府による公式謝罪を求める」というトンチンカンな決議がなされたが、こうした外交上の駆け引きと共に、日本・韓国のイデオロギストが「アジア女性基金」による救済は"欺瞞"だとして、日本政府以外からの金は受け取らないよう働きかけ、元慰安婦の方の困窮を更に深めていると言う。
また、NPO, NGOと言った美名の組織に対する盲目的な信仰も批判している。著者は、イデオロギーや大義名分あるいは外交カードと言った問題より、「如何にして元慰安婦の方を救うか」という現実的な問題に対処しようとしており、その見識の高さに好感が持てる。「慰安婦問題」を現実の視線から論じた好書。