19世紀以前の絵画は「見て感じる」より、「読む」のが先であるというコン
セプトのもとに書かれた書。その理由は、1枚の絵画にはその時代特有の常識
や文化、歴史、隠されたシンボルなどが存在しているから、とされている。そ
れ故、本書はこのような絵画の背景を説明していくというスタンスをとってい
る。そして、それらを説明するために選んだ視点が「怖さ」ということであっ
た。
内容は大まかに、歴史画、神話的作品、風景画、歴史画、観念的作品、宗教画
と続く。最初の歴史画ではハプスブルク家についての作品が、次の神話的作品
ではローマ神話についての作品などが扱われている。また、続く歴史画ではロ
シアの歴史について触れ、最後の宗教画では様々な磔刑図について説明してい
る。
個人的に面白かったのは、ハプスブルク家についての章(運命、呪縛、憎悪)
と、ロシアの歴史についての章(憤怒)、さらに、磔刑図についての章(救済
)であった。理由は、著者の歴史の説明が面白かったからです(笑)。絵とは
少々離れてしまっているが、読者を夢中にさせるような内容を選ぶのが非常に
上手いと感じた。専門的になりすぎず、かつ、幼稚にもならないという絶妙の
ラインが保たれている。また、説明も非常に分かりやすい。歴史が生きている
ような感覚を、読んでいて受けた。
絵画として印象に残ったのは、「我が子を喰らうサトゥルヌス(ゴヤ)」、「
イワン雷帝とその息子」であった。この2枚は確かに怖かった(背景的にも、
ヴィジュアル的にも)。まあ、全体的に不気味な絵画が多いんですが、この2
枚は特に。よろしければ、見てみて下さい。
というわけで、評価は☆5つ。美しい絵画を楽しみながら、様々な知識が身に
付く良書と言える。風景画などの章(喪失)が個人的には退屈でしたが、まあ、
これは好みの問題かなと思います。色々なものを詰め込んでいるので、人それ
ぞれ好きな章と退屈な章が出てくるのは自然でしょう。ただ、それでも評価が
落ちるということはなく、私としては、中野氏の他の書物も読んでみたいとい
う感情に駆られています。最後に、本書を絵画に興味があるという方に広くお
勧めします。