心のノート、教育基本法改正、有事法制、靖国・・・本書は、これら一連の流れを、「心」と「国家」と「戦争」を軸にして解き明かす。見えてくるものは、「国家」に回収されていく個々人の「心」、という事態である。
教育基本法や靖国に関する記述は、著者の『教育と国家』(講談社現代新書)や『靖国問題』(ちくま新書)と重なるところも多く、それらを先に読んでいた身としては特に新しさはない。(出版は本書の方が先だけど)
しかし、議論の切り口は見事であり、また平易な書き方で非常に分かりやすい。一連の流れの根底にあるものが一本の糸でつながってクリアーに見えてくる。
全体を通して印象的なのは、「心」を「国家」に回収されてしまうことは、現在の世界において今なお絶えない「戦争」という現実に対してあまりにも現状追認的になってしまうのではないか、という危惧。確かに昨今の潮流は、現状に批判的に向き合い、より理想的なものに改変していく姿勢がまるで欠如している。「懐疑や批判の精神を養うことにまったく関心のない「心の教育」は社会を健全に保つためにかえって危険ではないか」という指摘はもっともである。
P169「現在、私達の社会は敗戦後、最大の歴史的分岐点に立っていると思います。「有事法制」を認めて政府に対し戦争の禁止を解除してしまうのか、それとも逆に、かつての失敗から改めて教訓を引き出し、自国の「外」でなされる戦争や自国が勝利する側にいる戦争にも参加することを拒否し、戦争の加害者にも被害者にもならず、地域と世界の平和に非暴力で関与していくことを選ぶのか。私達皆がそれぞれに問われており、選択を迫られているのです。」
「戦争」のない世界をいかに作るか。そのためには「国家」なるものを相対化し、批判的に改善していくことが不可欠である。「国家」がせり出してくるこの時代だからこそ、本書を通して「国家」との向き合い方を考えたい。