文化史と銘打っているので、TDLのホーンテッド・マンションを枕にして、現代文化にいまなお出没するゴシックの連綿たる思潮を語るのか、と思っていましたが、よく読んでみると、著者は建築畑の工学者。
幽霊を演出する仕掛けのほうを、歴史的に追ってゆく、というのがメインの筋でした。
テクノロジーがファンタジー(幻想)文学を作り、推進してきた、と感じる私にとっては、まさにツボにはまった本です。
実際にホーンテッド・マンションに使われている仕掛けの本源をたどり、ファンタスマゴリー、ペッパーズ・ゴースト、マダム・タッソーなどを丁寧に取り上げながら、その間をゴシックの思潮やピクチャレスク、廃墟趣味などの、英文学的なラインで埋めてゆきます。
廃墟趣味からゴシックロマンスが生まれ、幽霊を実際に目で見せられた人々が、ホラー小説や幻想文学を生み出し(というか、広く受け入れるようになり)、幽霊屋敷やシンデレラ城(ノイシュヴァンシュタイン城)といったテーマパークの建築が、子どもたちに妖精や魔法の想像力のテコ入れをし・・・・。
五感に訴えるテクノロジーがさきにあって、ようやく想像力の文学が広く成立するのだと思います。
映画や劇場はさすがに取り上げられていませんが、想像力の生じる「場」としての、自然界ならぬ建築の力、ありえざるものを生み出す、幻灯機に始まるヴァーチャル・リアリティのテクノロジー。
ユニークな文学論として座右に置きたい本です。