「原発と新聞報道」に見られる日本のマスコミの偏った、国民を誘導するような報道に対する記述があるが、三十年経った今でも同じことの繰り返しである。山本七平は報道は宣伝戦の一面があるという。日本人は恣意的につくられた国際世論というものにのせられ易い体質を持つ国民だとつくづく感じる。そして情報は多ければ多いほどその人が正しいと感じる情報だけを都合よく受け入れる結果につながる。所詮、人は自分の信じたいことしか信じず、何かを信じ込んでしまうと、いかなる論証も受けつけなくなるのである。
貝塚茂樹博士の研究によると聖徳太子の憲法十七条「和を以て貴しとなす」は仏典からの引用ではなく論語から引用されたものであるという。その他にも論語に基づく個所が五ヶ所あるとのこと。日本人は論語の影響をかように受けてきているのだ。山本七平氏はこれが不知不識のうちに日本人の絶対的規範を形成しているという。ゆえに日本の社会では「論語の通りに行っている人」に人望があり、それに違反している人には人望がない。
モノの見方考え方のヒントが得られる。常識と思っていたことを「何故そう考えるに至ったか」「世界の常識とは何故違うのか」と考えてみることが我々日本人の伝統的文化を再把握することにつながると思う。短いエッセイ風の論考?をまとめた本ですが、山本七平らしい深い冷静な洞察にみちている。