元来、保守主義は、偏狭なナショナリズム、頑迷な現状維持主義、知識人による上から目線の観念論とは無縁である。むしろ、異質なものを受け入れる開放性と自由主義、変化に対応する進取の気性、プラグマティックな現実主義と国民への信頼を基盤にしたものである。そこには、ある一定のイデオロギーや政策セットなどない。状況に適応して柔軟に現実的政策を打ち出す「中庸の作法」にこそ保守主義の真髄がある。
従って、ここで参照される5人の保守主義の政治家たちは、共通して保守主義の「作法」に従って成果をあげているが、実行した政治の内容は実に多様である。そこに、保守主義の多様な豊潤さと、香りたつような魅力が生まれる。
今の日本の政治のお粗末な状態にあるのは、最大野党である自民党がしっかりとした魅力ある保守主義を提示できないからでもある。自民党は、民主党に対抗して新たな人気取りマニュフェストを提示するのではなく、災害や国際的な経済危機など、予測できない事態が将来に起ころうとも、柔軟に対応できる保守主義の作法の魅力を十分に伝えなければならない。そう、思わせる素晴らしい本である。