「いい大学を卒業したのに仕事が長続きしない人」や「テストの成績はいいのに他人と上手に関係を持てない児童・生徒」がいるのはなぜなのか。
こうした誰もが抱く疑問に対し、著書は本書の前半で脳科学・脳育成学の観点から解明する。そして導き出された答えがHQ(Humanity Quotient, 人間性知能)という「脳の機能」であり、脳科学的にはこれが「人間性」であると。さらに後半では大きく言うと以下の2点を主張する。
1.子供の脳の発達には、それに適した環境(『進化的に予想している環境』、略してEEE)が必要である
2.その環境は科学的な視点からふさわしいものを用意すべきで、観念論やイデオロギーで歪めてはならない
その環境とはいかなるものかについても研究で明らかになっているそうで、例えば3〜8歳までの間にはこうした環境が脳の発達に良い(本書では「gFにプラスに寄与する項目」)として列挙されている。
・母親との接触時間が長いこと
・TV(特にバラエティ番組)をよく見ること
・公園などでの集団遊びの頻度が高いこと
・祖母と接触する頻度が高いこと
・魚をよく食べること
・箸使いがうまいこと
三世代家族がちゃぶ台を囲んでテレビを見ながら晩ご飯を食べているような、まるで『三丁目の夕日』に出てきそうな光景が目に浮かばないだろうか。
我々がはるか昔に経験し、いつの間にか置き忘れてしまったような日常風景、―子供たちが成長する土壌はそんな身近なところにあったのかと気づくと、休日の家族との触れ合い方も考え直さねばならぬ気がしてくるから不思議だ。
子供のことを考えながら我々自身の「人間性」や生き方についても考え直す、そんな貴重なきっかけを与えてくれる一冊。人の親となる人は自分自身、孫が生まれそうな世代は自身と子供夫婦のためにも、ぜひ一読されることをお勧めしたい。