著者自身は、子供を持たずに生きてきて
そしてそのまま歳を重ねることに迷いを感じている立場です。
しかしながら、この本はあくまでも、迷う人が再考するために
さまざまな選択肢の姿をわかりやすく示すだけです。
読者に選択を迫るようなことはないのが、非常に良い点だと思います。
社会情勢などに関する国内外の客観的なデータを揃えながら、
生きてきた世代も、「子供を持ちたいのかどうか」ということも限定せず、
質・量ともに充実した協力者へのインタビューと
著者自身の半生の物語から、いろんな視点を見せてくれます。
どれかの選択をおススメしたり、評価を下したりしないスタンスが、
著者の筆力によって投げやりになることなく、
子供を産む、産まない、という選択にまつわる多くの問題をあぶりだします。
あとひとつだけあればいいな、と思ったのは、生まれてくる子供の視点です。
「産む」のは親ですが「生まれて」生きていくのは子供です。
いま生きている人間は、自分自身が子供を持とうが持つまいが、
未来を生きる人間が幸せに暮らせるように、社会を動かす努力をすべきではないでしょうか。
しかし、人が良くも悪くも生まれてきた時代に影響されること、
社会の中で、自分一人ではどうにもならない苦しさ(あるいはおもしろさ)は
この本の全編を通して語られています。
そのことで逆に、自分が生きる時代を超えてなすべきことを考える機会が得られると思います。
ますます激動する社会の中で生きるために、この本は確かなひとつの道しるべになるでしょう。