地震研究の大ベテランによる、分かりやすい解説書。著者自身の経験(同じ講談社文庫の「私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか」に詳しい)の反映か、若干くせのある部分も残るとはいえ、全体としては日本の地震研究の歴史を踏まえつつ、地震予知の難しさ、そして一面での不毛・無駄・強引さを突いていて、なかなかに面白く読めた。気象庁などが発表する地震発生の「確率」の受け止め方、活断層やプレスリップの評価の仕方など、教えられるところは、見込んだよりも大。承知していたはずの「自然現象としての地震と、被害が社会的に拡大する震災」の違いが腑に落ちる形で納得できたのも、収穫だった。
省庁の縄張り意識や学閥がもたらす弊害は、他のジャンルにおいても実際に間違いなく存在するもので、本書に散見されるそれも別にタメにする記述とは言いがたい。それよりも、ここ数十年の日本の地震予知研究を水面下で動かしている変なバイアスを、OBなればこその視点で批判している点は、ある意味、勇気ある試みだ、と思う。共同通信編集委員の解説も秀逸。惜しむらくは、タイトルの「ウソだらけ」。本文にはウソではない地震予知に関わる記述もたくさん出てくるのだから「ウソだらけ」はやり過ぎ。