1976年夏に産声をあげた「地球の歩き方」。爾来、日本人の海外旅行に多大な影響を与えてきたガイドブックの30有余年の歴史を綴った一冊です。
「地球の歩き方」を生んだ中心人物は4人の若者(当時)。ダイヤモンド社の子会社で企業視察や語学研修ツアーを担当していた彼らが「自由旅行をやろう」と思いついたのが発端です。
70年代当時、日本人がパックツアー以外で自由気ままな海外(放浪)旅行をすることを企業が後押しするというのは、「無責任」「非常識」とそしられる時代。しかしホテルの予約も入れずに日本の外へ行き、明日の行き先も列車に乗ってから決めてもいい。そんな自由な旅行のすばらしさを応援するべく生まれた「地球の歩き方」は、だからこそ進取の気性に富んだ勢い溢れるガイドブックとなっていきます。
私が85年に初めて海外旅行に出かけたときも旅の友は「地球の歩き方」でした。小口を青く塗った、ページ数も800頁近くはあったであろう「(西)ヨーロッパ編」を片手に、あさっての居場所も決めない50日の旅に出たものです。
創刊者たちはこの「地球の歩き方」を手にした若者たちが現地で連帯感を持ってくれることを期待していたとありますが、私も旅の途中で知り合った日本人学生から「東ヨーロッパ編」をゆずってもらい、プラハへと想定外の旅をするに至る、まさに連帯の瞬間を体験しました。
さらに本書は、「地球の歩き方」がかつての貧乏バックパッカーのバイブルというよりは、より幅広い海外旅行者のガイドブックに変貌を遂げた経緯について綴っています。
最近の若者はかつてに比べて海外に長期で出ることは減ったのだとか。少々心さびしい思いにとらわれます。
わが身の若かりし頃の、デタラメで当てずっぽうだった旅の日々を懐かしく思い返し、それを支えてくれた「地球の歩き方」と日本人の海外旅行とのこの30年の変化に思いをはせる読書となりました。