題名に「原発」とあったので、今の流行を追う本のひとつかも?と、さほど期待せずに読み始めたが、実は得るところが大変に多く、どんどんと読めた。日本国内・海外での国民投票・住民投票の多くの例に触れることができ、それぞれの目的・仕組みの違い等を自然に理解することになる。
もっとも興味深かったのは、過去に日本で実施された住民投票についてのルポルタージュである。各村や町での記録からは、住民たちが費やした時間・労苦・試練が、予想以上であることが感じられた。実際には淡々とした表現なのだが、民主主義の本質を理解する=選挙で代議員を選ぶだけではなく、時には自分達が『政策そのものを選択して投票する』という行動が、決して簡単なことではないが、同時にそれだけ意義のあることであると、まるで教科書のように語られている。また後半では、今後の投票活動のための参考資料として、多岐にわたるオピニオンン・リーダーたちの原発に対する発言が掲載されているが、ここでも可能な限り多くの意見を公平に広く集めようという著者の配慮が感じられ、好感をもった。
個人的には、過去の住民投票の例をもっと深く知りたかったが、新書という限られたページ数の中では、こちらが欲張りすぎているかもしれない。実際、本文の中で「住民投票―観客民主主義を超えて」という別の著作を、この点で紹介してくれているので、引き続きこちらも是非読んでみようと思う。