イスタンブールで暮らす詩人のユスフは、母の訃報を受け久しぶりに故郷のトルコに帰ってくる。実家に帰ると見知らぬ美しい少女が彼を待っていた。
第一部の『卵』の触りはこんな感じだ。
全3作を通じて印象的だったのは、かなり長めの長回しと、台詞や説明を極力省いた脚本、目を奪われる映像の数々。
静かにゆっくりと、しかし確実に進む物語は、どのシーンをとっても詩的で美しく、まさに映像美という言葉がふさわしく、これこそが映画の本質の一つではないかと思う。
どの作品も素晴らしいが、特に『蜂蜜』は傑作。
[ここからややネタバレあり]
花の名や道具の使い方を覚え喜ぶ健気な姿や、学校での苦い経験や想い、大好きな父との触れ合いなど幼きユスフの出来事から、彼の「ルーツ」を知るとともに、揺れ動く様々な感情を感じとれ、どのように影響していくかも知ることができる。
哀しみに暮れる母の横で、母を見つめながら嫌いな牛乳を無言で飲み干すシーンは、揺れ動く感情を端的に表したシーンの中でも特に素晴らしい。
音楽が一切なく、聞こえるのは木々のざわめき、小鳥のさえずり、天然水の滴る音など自然の音のみで実に効果的。
この自然の音と独特な映像が相まって、自然こそ人間の原点であり還る場所であり思わされる。
鑑賞後にこれが映画、これが芸術なのだと改めて思い知らされたのと同時に、日本と海外の芸術に対する意識の差、映画の在り方の差、総合的なレベルの圧倒的な差をも思い知らされ、現代の邦画の情けなさが余計際立ってしまい、何とも複雑。
現代の邦画でも素晴らしい作品はいくつもあるが、全体的に見ると圧倒的に劣っていて悲しい...