2003年に初版本を買って、今日まで未読で放ってあったのを後悔している。
本書は講談社の読書雑誌「本」に数年に亘って連載されていた旅行エッセーを単行本にまとめたものである。
明治の文豪、森鴎外が童話作家として有名なアンデルセンの「即興詩人」を翻訳して「原作以上のできばえ」として絶賛を浴びたが、この物語の主人公アントニオのイタリア一周恋愛冒険譚の道すがらを丹念に足跡を辿って、再現した旅行記である。
イタリアという国中が博物館みたいな土地柄もあるが、1830年にアンデルセンが書き、明治35年に森鴎外が翻訳した小説に出てくるホテル、レストラン、教会から小道にいたるまで、森まゆみの執拗な好奇心は殆ど全部探し出し、それぞれの場所で感慨にふける。作者は本書を上梓するまでに4回のイタリア取材旅行を試みているが、それ自体がイタリア観光案内をかねたような本の出来栄えになっている。
現代の人々にとっては森鴎外の「即興詩人」はとっつきやすいものではないが本書によって、その真髄の片鱗に触れることができる。
なによりも羨ましいのは、著者が自由に時間を使って、アントニオの足跡を辿り、自由にホテルを選び、読んでいると涎の垂れそうにおいしそうなイタリア料理を堪能していることである。私は「即興詩人」も無理して読んだし、10年程前にイタリア旅行もしたことがある。そのとき、この本を持っていけたらなーと、今更ながら残念なきがする。