「医療を動かす」をテーマとした東京大学医療政策人材養成講座(HSP)のライブ版講義録といった趣の一冊です。
HSPは、「医療を動かす」人材の育成を目標とした、従来の大学像から離れた試みとして時限的に行われたものです。
臨床現場の医療従事者は、政策を知らず、世論に訴える手法を知らず。
患者は、医療の限界と医療政策への接近方法を知らず。
たまたま人事異動で医療を担当した記者は、医療を構築する全体像を知らず。
誰もが不平と不満を持ち、身近な敵を作り出し傷つけ合い、そして未来が見えなくなりつつある医療に、東京大学医療政策人材養成講座は一筋の光明をもたらしたのかもしれない。
東京大学医療政策人材養成講座の受講者は、4つのステークスホルダー(利害関係者)と分類された、医療提供者、患者支援者、ジャーナリスト、政策立案者などからなる。
学問ための学問では無く、告発基調の現場報告でも無く、医療に対する過剰期待の裏切られ物語でも無く。
HSPへの期待は、本書に紹介され垣間見える講義の質と講座を支える人材の厚みのみではなく、講座受講者の質の高さが、生み出しているものと思われる。
本書で取り上げられている主要なテーマは、医療財政、医療政策論、医療経済学、医療の効率性と資源配分、市民主体の医療、地域主導の医療、医療の質と情報、医療事故、政策評価、社会調査法・研究倫理等である。
本書の実質的な姉妹本に『医療を動かす-HSP(東京大学医療政策人材養成講座)の活動記録』著・HSP活動報告委員会 (幻冬舎 2007/12) がある。
講座受講者たちのその後の活動内容は、この『医療を動かす-HSPの活動記録』が詳しい。
二冊の併読をお勧めする。