仲正によるシャープなアイロニスト養成講座。
アイロニストとは表面的で薄っぺらな「皮肉屋」のことではない。それはつまり、考えることをやめない態度のことなのだ、と仲正は力説する。しかし、考え続ける自由と引き換えに、立ち位置を明確にできず、誰とも共感しえないという孤独を味わうことになる。そもそも、共感なんて幻想なのかもしれないが。
二項対立の不毛さから抜け出すためにはどうすればいいのか、知的好奇心を刺激する意欲作。語り口は平易でわかりやすい。若干自虐的なところは照れ隠しか。
手っ取り早く「安全な立ち位置」を求めたい人にはお勧めできないが、より深くより斜めに思索する苦しさに耐えられる精神的マゾには格好の内容である。哲学史も見通しよくコンパクトにまとめられており、これから「哲学したい」という人にもお勧めできる。このあたり、さりげないサービス精神が心憎い。
内田樹と春日武彦による対談「健全な肉体に狂気は宿る―生きづらさの正体」では、白黒つきかねる問題に対して、立つでも座るでもない「中腰でいること」の大切さについて語られる場面があるが、仲正の言うアイロニストも「中腰」を厭わないという点では共通している。
いつまでも中腰でいると腰を悪くするが、アイロニストの場合はさて、どうだろうか?