出資法人との間の資金移動を使った赤字隠しなど橋下府政の実績にまやかしが多いこと、テーマパーク誘致にからむ後援会メンバーへの便宜供与疑惑などに見られる不透明な利権創出体質の懸念、など、事実に基づき、立場に関わらず橋下氏への疑念を抱かせるに足る素材を多く含む。
ところが、本書は、それらは必ずしも重点としておらず、立場によって受け止め方が変わる、つまり橋下氏支持者の切り崩しに有効でないと思われる論点に力を入れている。
府内の市長選挙への介入を繰り返し批判するが、首相=与党党首が知事選挙の応援をするようなもので、政治集団の長として当然のことである。これに腹を立てるのは反橋下氏陣営だけだろう。
また、かなりのボリュームを割いた大阪都構想批判(第2章)は、あまり効果的な論述になっていない。
地方自治のあり方・大阪市の形を変えるかどうかが争点の時に、「地方自治の精神」を前提抜きの善の如くに掲げ、現状の大阪市を独立自治体として尊重せよ、と主張しても、有効な攻撃にならない。
道州制への移行を前提とするなら消えるべきは大阪市ではなく大阪府のほう、という主張には一理あるが、現状の大阪市をそのまま維持する理由にはならない。本書では、いろいろ表現は変えながらも、結局、伝統ある行政区分だから、という理由づけ以外には見あたらないのだ。
第4章の利権体質への懸念は多くの示唆を含むが、民営化や公有資産売却を全て「利権」として否定的に見るかのごとき記述が散見され、説得力を削ぐ。
目的は、反橋下陣営の結束を固めること、橋下氏支持者の切り崩し、どちらなのだろう。前者なら言いたいこと全部並べりゃ満足、で結構だが、後者の目的があるにしては、武器の使い方のメリハリがついていない。
メリハリつけて冗長部分を刈り込めば、主旨を損なわずに、より手に取られやすいボリューム7割、180ページぐらいにはできる内容。性格上、多くの読者を得たい本では無いのか?
重要な記述を多く含み、広く読まれてほしい本だけに、戦術眼のなさが残念。